エネルギーに対する常識がどうしても過小評価をしてしまう
ぼくたちがエネルギーをどんなに安いものだと思っているかを認識させる為に、ファクター5の著者のフォン・ヴァイツゼッカー教授は一般人相手の講演のときに良く話す例がある。
教授「私は環境学を学ぶ学生に時々問いを出します。ここに10リッターの水が入ったバケツが有るとする。それを海抜0メートルから世界最高峰のエベレスト山、8848メートルの頂上に持ち上げるのに必要なエネルギーは何kWh(キロワット時)かと言うものです。すると学生は携帯電話を電卓にして暫く叩いて見て、だいたい100kWh〜1000kWh位の数字を言います。」
これは純然たる物理学の問題ではあるのだが、ぼくたちのエネルギーに対する価値(価格)がいかに低いかを表す結果となる。当然、学生の中には物理や数学が得意な学生も居るはずだが、おおよそ答えはこの範囲に入るのだそうだ。正解は0.25kWhである。最近日本でもFIT(Feed In Tariff)電力強制買い取り制度の実施がはじまるが、その買い取り金額は1kWhが41円であるので、海抜0メートルから10kgの荷物を8848メートル持ち上げるのに10円の電気ですむことになる。これがぼくたちの常識とはかけ離れた感覚を与えてしまい、計算結果はきっと桁数を間違えたに違いないと0を3個ほど付けてしまうようである。
ちなみに1リッターのガソリンの熱量は約36000kJ(キロジュール)で、これは約10kWhの電力に当る。つまり1リッターのガソリンの持つエネルギーは400リッター(ドラム缶2本分)の水をエベレストの頂上まで持ち上げるエネルギーを持っている事になり、全部電気に換えることができれば410円で売れることになる。それくらいエネルギーは低い評価しか受けていないと言うことになる。
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