ダンテの森    
10 Jan 2012   06:03:56 am
排出権取引
公害問題から生まれた商業的制度

 各国家や各企業ごとに温室効果ガスの排出枠(キャップ)を定め、排出枠が余った国や企業と、排出枠を超えて排出してしまった国や企業との間で取引(トレード)する制度である。京都議定書に規定されており、温室効果ガスの削減を補完する京都メカニズム(柔軟性措置)の1つ。

 1990年代前半から、アメリカ合衆国で硫黄酸化物(SOx)の排出証取引が行われた。排出枠を定めたうえで、排出枠を下回った者がその削減分に付加価値をつけて排出枠を上回った者と取引するもので、硫黄酸化物の排出量の削減に大きく貢献した。アメリカはこの経験を踏まえ、京都議定書に排出取引制度の導入を強く求めた。同国はその後に京都議定書から離脱したが、排出取引制度は京都メカニズムとして残った。これは排出枠の対象を温室効果ガスと国単位に変えたものである。

 排出取引制度が導入された背景には、温室効果ガスの排出量を一定量削減するための費用が、国や産業種別によって違いがあることが挙げられる。例えば、これから開発する開発途上国では、すでに先進国で開発された技術を導入すれば温室効果ガスを削減できるので比較的小さい費用で済む。一方、これまでに環境負荷を低減するために努力してきた先進国では、更なる削減には新しい技術やシステムを開発する必要があり、多大な投資が必要となる。排出取引の制度を導入すると、削減しやすい国や企業は炭素クレジットを売ることで利益を得られるので、削減に対するインセンティブが生まれ、より努力して削減しようとする。

 ただしその一方で、先進国がより少ない投資や労力で済む排出取引を積極的に利用してしまうと、温室効果ガスを削減するための新たな技術やシステムの開発の必要性が薄れ、技術やシステムが広く普及してしまえば削減が難しくなり、結果的に温室効果ガスの削減が停滞することも考えられる。

 世界全体での排出取引の市場規模は、2007年時点で約400億ユーロ(約4兆円)前後であるが、急激な拡大を見せており、今後も拡大は続くと予想されている。取引総量は2007年時点で27億トンで、これも急激に増加している。

銀行や証券会社が、金融商品として排出量を株式や債権と同じように取引する試みもある。


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