この20年間で大きな差ができてしまった両国
先日、ぼくが出版社の人から、環境や省エネ先進国の日本に環境問題を扱った外国の文献を翻訳しても売れませんよと言われたと言う話をある人にしたら、昨日その人から「日本政府や企業がドイツから学ぶべきは、技術を海外から導入してビジネスをいかに拡大するかではなく、環境に対する考え方ではないかと感じています。安全性を優先させ、また次世代、次々世代に汚染を残さないことを基本法に明記する国の考え方を学んでほしいですね。」と言うメールを戴いた。
ドイツでは、1980年代の初めに西ドイツにおいて環境保護をドイツ基本法(日本の憲法に相当)に追加するべきだという議論が、議会や政党レベルで起こった。1990年の東西ドイツが統合を経て、1994年、ドイツ政府はドイツ基本法に環境に関する条文を追加するという画期的な決定を行った。条文の趣旨は「国家は、次の世代に対する責任において自然環境を保護する」というもので、この条文はその後のドイツ環境保護政策の方向性を示したものとして、内外から高い評価を得ている。ドイツの資源リサイクル、自然・景観保護、温暖化防止、水質保全、騒音防止などの法律の制定は、このドイツ基本法における環境保護の条文によっている。ドイツが環境先進国と言われるようになった所以である。
因みに現在の政権はCDU(保守)と緑(環境保護)の連立であるが、その連立合意文書の冒頭には地球環境保護が謳われている。
日本では、1993年に制定された環境基本法により、環境保全についての基本理念が示されている。同法では、国、地方自治体、事業者、国民の責務が明らかにされるとともに、環境保全に関する施策の基本事項などが定められている。また、地球規模の環境問題に対応し、環境負荷の少ない持続的発展が可能な社会をつくることや、国際協調による地球環境保全の積極的な推進などが基本理念としておかれている。
しかし法律の制定から20年経た今、ドイツ、日本両国の環境への取り組みは大きな差が出てしまった。福島の原発事故を見てすぐに「原発撤廃」と国民運動を起こしたドイツ国民とそれにすぐ反応して「2020年までに全原発停止」を宣言したドイツ政府、それに較べて未だに「原発が無いと計画停電だ」と脅す電力会社に対し何の手も打てない日本政府の体たらくが、その差を象徴している。
毎週金曜日の反原発デモが全国民の環境問題=エネルギー問題の世論を高める場となって行く事を念願する。
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