セメント・ルネッサンス
セメント製造プロセスで最も電気エネルギーを消費するのはグラインディング(粉砕)工程である。平均的に1トンのセメントを製造するのに100kW時の電力を必要とする。最先端の技術を使った設備でも80kW時が必要である。コーヒー豆を挽くのと同じ技術である粉砕工程は非常にエネルギー変換効率が悪く5〜10%でしかなく、この方法の抜本的な改良は今後も見込めない。
このようにポートランド・セメントはエネルギーの塊であると言える。200年間建築材料として使われてきたポートランドセメントには退場戴くしかない。もともと人類はジオポリマーセメントと言う優れた技術を持っていた。4000年前の古代エジプト人はピラミッドを、2000年前の古代ローマ人はコロッセオをジオポリマーセメントで作った。その技術が優秀であった事は現在もこれらの建築物が存在し続けている事で証明済みである。古代人達は現代人のように大量エネルギー消費はしなかったので当然ジオポリマーセメントを製造するにもエネルギーは使っていない。ただ、製造にも凝固にも時間は余計に掛る。
現存するポートランドセメントの製造設備をレトロフィット(改造)してジオポリマーセメント製造を行う事ができる。キルンはポートランドセメントでは1400℃であったのが700℃に下げる事ができる。また石炭を粉塵にして燃焼している石炭火力発電所から出るフライアッシュと呼ばれる石炭粉塵の燃えカスを使う事でグラインディング工程の省エネも可能で全体で80%の省エネが可能となる。
2030年までに全てのセメント工場がジオポリマーセメントに置き換わったとすると、セメントを世界で50億トン生産してもCO2排出量は7億トンのとなり、2005年の18億トンの60%減となる。セメント・ルネッサンスだ。
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