未曾有の危機を持続可能社会建設のチャンスに
仏教には「変毒為薬」と言う言葉がある。毒を変じて薬と為すと読むが、意味は危機や不幸をチャンスに変えると言う意味である。
2008年に起きたリーマンショックから始まった世界的な経済危機は、考えられない程の悲惨な事態を生んだ。人々は、これで安心と思っていたところが、家を、財産を、仕事を失い、中には飢餓の恐怖さえも味わう思いをする事になった。政治はこの悲惨な状況から一刻も早く抜け出せるようにと対策を講じた。その迅速な危機管理は有る程度効を奏し、1930年の世界的恐慌から世界大戦へとの悲惨な事態こそは回避した。
しかし、この経済危機は「グリーン経済」への移行を始める事ができた最大のチャンスであった。もとより原油価格の高騰に因を発した経済システムの破綻は、高エネルギー依存から低エネルギー依存型経済に移行する大きな動機となりえたはずであったのに関わらず、安易にもと来た道に戻ってしまった。グリーン経済に戦略的に移行することで新たな職場を確保すると言う政策を取った国は現れることは無かった。最大のチャンスは生かされること無く見送られた。
現在日本は東北大地震からの復興が直面の課題である。特に東北沿岸部の津波により全滅した都市の復興は持続可能都市いわゆるグリーン都市建設の最大のチャンスである。政府、地方公共団体が地権者と真剣に都市の未来を話し合ってグリーン都市建設の為に全くの白紙の状態から新しい都市を作る事ができると思う。ファクター5には都市のデザインの考え方について、可能な限り、日常の生活、公共サービス、医療サービスは徒歩圏で受けられる事、通勤・通学は自転車圏に、都市内の移動はライトレール等の再生可能エネルギー利用の公共交通機関で行う等の都市計画を提案している。
東北に持続可能な都市の建設は新たな雇用を生み、東北の経済復興が行える。出来上がった都市は、人と人の絆を身近に感じることのできる住空間と、高齢者も自分で生活が可能な都市、自転車と徒歩で殆どの生活が営め、更にCO2を出さす環境負荷も少ないグリーン都市ができれば、日本がグリーン経済のリーダーたり得る資格を得ると同時に、復興を応援してくれた世界への最大の恩返しになる。
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