航空輸送に対するCO2排出規制に反対する法律が米国議会を通過
米国の航空会社に欧州が定める排出権取引協定(EU ETS, Emission Trading Scheme)に加盟することを禁止する法案が昨年12月に上程されていたが、8月2日に夏休み中の為に審議されぬまま上院を通過した。下院は同法案を既に可決している為に、法律として発効する為にはオバマ大統領が署名するのみである。グリーンピースや環境保護のNGOは大統領に署名をしないようにロビー活動を強めている。
航空は一人の旅客が一定距離を移動するのに最も環境負荷が大きい輸送手段であり、現在は総地球温暖化ガス(GHG)排出量の2%であるが、年率28%で増加している最大の増加率を持っている分野である。
EU ETSは欧州に拠点を置く航空会社のみにとどまらず、欧州内の空港に離発着する路線に対しCO2の排出量に応じた環境税を支払うか、排出権の購入を義務付けるものである。中国はすでにこの協定に加わる事を禁じる法律を施行しており、ロシアはアメリカと協調歩調を取ることに決めている。日本は態度を保留している。
アメリカはこの協定に反対する16ヶ国を8月にワシントンに集めて2日間の会合を持ち全会一致でEU ETSに反対する決議をした。しかし、決議文などは出されていない。また、この会合で環境負荷対策についてはICAOで協議することが採択されたとしている。欧州各国は長年にわたってICAOに対し環境負荷対策を議題に取り上げるように働きかけて来たが保留されてきたので、この面では一歩前進したと言えるが、ICAOは3年に一度しか会合が開かれず、次の会合は来年である。
EU ETSは、アメリカが国際法違反として上訴していたが2011年12月に欧州裁判所は国際法を冒すものではないとする判決を出している。
EU ETSは例えば東京を発ってロンドンに向かう航空便にはその全路線に渡るCO2排出量を計算の対象とするもので、反対国の主張は欧州域内に入った路線を加算するのはともかく全路線に渡って加算するのは納得できないとしている。ちなみに、CO2は短時間で拡散する為に常に地球上のCO2濃度は場所によらず一定である。
イギリスの航空会社バージン航空は、廃油から航空燃料を作る技術で、ゼロエミッションを目指しているし、ドリームライナーと呼ばれるボーイング787は東レの炭素繊維の全面採用で40%の燃費向上を達成しており、EU ETSのような規制は航空機業界のグリーン化を促進する効果を持つ。
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