発展途上国は即刻ジオポリマーセメントに切り替えるべき
当ブログでは、製造時に大量のCO2を発生するポートランドセメントに代わるものとしてジオポリマーセメントを2011年の8/20, 9/7, 11/17, 12/11に紹介した。ジオポリマーセメントは現在一般にセメントとして使われているポートランドセメントに較べ80%も製造時のCO2の発生量が少ない。
このセメントはアルミニウムシリカ・セメントとも呼ばれ、アルカリ活性化した火山灰、高炉スラグ、フライアッシュ、カオリナイト、金属成分を含むスラグ等を原材料に作られる。ポートランドセメントの製造工程で石灰石を1350℃の高温で焼結する時に石灰石から放出されるCO2と高温を得るために燃やす燃料からCO2が大量に放出されるが、ジオポリマーセメントでは原材料の一つである水ガラスと苛性ソーダの製造時に多量のエネルギーを消費する為にCO2の放出があるだけで、ポートランドセメントに較べると80%の省エネになる。
ジオポリマーはアルミニウムシリカの粉末とアルカリシリカ溶剤の化学反応により作られる。古代エジプト人やローマ人はアルミニウムシリカ粉末は火山灰を使った。産業革命の発祥の地であった英国には火山灰が無い為に、たまたまポートランドに豊富にあった石灰石を使ってセメントができないものかと考えられたのがポートランドセメントでそれが世界中に広まった。
製鉄所から出る高炉スラグや石炭火力発電所から出るフライアッシュも原料になる。日本やドイツにおけるこれらの産業廃棄物の再利用はかなり進んでおり、高炉スラグは日本では50%、ドイツでは88%が、フライアッシュは日本では80%が、ドイツでは25%がすでに特殊セメントの材料として使われている為か、日本とドイツのセメント業界はジオポリマーセメントへの転換の機運は無い。日本ではコンクリート建造物の寿命は50年と言われてビルの建て替えが行われているが、ジオポリマーに変えると建造物の寿命が数百年にも延びるのは、建設業界やセメント業界にとって好ましくないからと言うのは、穿った見方と言うべきであろうか。
現在、世界で最も大量のセメントを使用しており、今後も2030年までは消費の増加が続くとされる中国とインドでは、高炉スラグもフライアッシュもほとんど再利用されることなく廃棄されている。中国の石炭火力発電量は世界一で大量のフライアッシュが出ているのにかかわらずである。
注)フライアッシュ:石炭火力発電所では石炭を小麦粉の様な粉末にして少量の水と混ぜてバーナーから噴霧して燃やす。燃えカスは細かい灰でフライアッシュと呼ばれる。
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