エネルギー価格に影響される企業の省エネへのモチベーション
セメント産業は重工業の中でも鉄鋼と並んで環境負荷の大きな産業である。セメント産業だけで世界のGHG(地球温暖化ガス)排出量の5〜8%を排出している。2005年には18億トンのGHGを排出した。
図はセメント1トンを製造する為に排出されるGHGの量を地域別に表したものである。世界の平均は0.22トンのCO2換算の排出量である。
これを見て気付くのは、国の持つ技術レベルや文化レベルとGHG排出量は必ずしも一致しないと言う事で有る。アメリカは後発開発途上国が多いアフリカよりも悪い。
中国のように建設ラッシュが起きている国では、国全体のGHG排出量の25%がセメント産業から排出されている。先進国にあってもセメント産業はいまだに大口のGHG排出源であり、1990年に較べて2007年には34%も増加している。
日本は、ドライキルンしか使わず、予備ヒ―タで予熱するなどしてセメント生産の効率化を追求した事で3.1GJ/tonと言う高効率を達成している。日本はエネルギー源は100%輸入に頼っており、それに加えて多額の税金が燃料には課せられている事で、エネルギー価格レベルは世界最高水準である事から、日本のセメント産業は競争に勝つためにはエネルギー効率を上げる以外に方法は無かったのだ。
これを見てもファクター5でフォン・ヴァイツゼッカー教授が主張するエネルギー価格を人為的に高く誘導する事が省エネを推進する力となり得る事が分かる。
200年前の産業革命と同時に英国で発明されたポートランドセメントはライムストーンを高温で焼く製造法の為に膨大なエネルギーが必要である。これに対し、古代エジプト時代にはピラミッドの建設に、ローマ時代にはコロッセオ等の建築物に使われてきた4000年の歴史が有るジオポリマーセメントは製造にエネルギーを必要としない。これに代えればファクター10でも達成が可能である。
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