点滴灌漑よりさらに水を使わない農業
農業はGHG(地球温暖化ガス)排出量の18%と淡水消費の70%の環境負荷を与える分野である。GHGの排出要因の80%は農業用水を確保する為に消費されるエネルギーを作る為に出されるものである。更に、淡水資源は後10年で危機的な状況になることが2006年に国連環境計画(UNEP)から報告されている。
点滴灌漑については本ブログで再三取り上げている(2011.9.19-20他)が、点滴灌漑を更に効率を上げる方法が部分乾燥点滴灌漑である。これは、一部にわざと水を送らずに乾燥させると言うものである。
作物の列の奇数列と偶数列を交互に一定期間灌漑すると言うものである。その期間や水量は作物と気候により異なるが、数日間から数週間のサイクルで交互に水を送る。
根が乾燥し始めた作物は危険を察知して葉の表面にある蒸発孔を閉じたり、背丈を伸ばす事を停止したりの対策を講じ始めるという。同時にこの情報を近隣の同種の作物にも伝達するらしい。その情報は現在灌漑を受けている作物にも危機管理の為の準備を始めさせる。一定期間の後、水が戻ってくると作物は水を今までよりも効率よく使い次の乾燥に備える。乾燥し始めた作物は既に情報を持っているので、すぐに対策を講じる。これを繰り返すことで、より少ない水量で作物は以前にまして成長するという。
点滴灌漑農業は、現在一般的に行われている溢水農業の30〜20%の水量しか使わない事が知られているが、この部分乾燥灌漑ではさらにその半分の水量で済むと言う。その上、作物は背丈が短くなり収量は増加する。フルーツでは糖度が上がり品質向上となる。
現在、国際コンソーシアムが作られ、キプロス、トルコ、ポルトガルと英国で実験が行われている。穀物の他、オリーブ、シトラス系果実、トマト、ナス、ラズベリーと綿花で成果が上がっている。
|