小さな省エネを集めるより抜本的な省エネ革命を
建築物(住宅、商業ビル、公共ビル、商業施設、工場など全て)には、必ず冷暖房設備(HVAC, Heating, Ventilating and Air-Conditioning)が有る。現在の建築物は殆ど断熱されていないので多大な電力を使って強制的に冷暖房を行って快適性を作り出している。
HVACが消費する電力は、アメリカでは30%、欧州では56%、中国では61%である。これを「ファクター5」が提唱する建築をパッシブハウス構造にすること、つまり建築物の断熱構造を外断熱にし、窓枠や窓ガラスを改良し、エアコンのデザインを変更することで、最大80%の省エネが達成できる。その改築に掛る費用はおよそ建築物の建設費の数%〜最大でも10%程度で、この改築費は大幅に節約される電力料金によって数年〜15年で回収される。
現在、政府、電力会社、マスメディアが盛んに勧める省エネはこれとは異なり、使わない電気器具のコンセントを抜く、エアコンの温度設定を28℃にする、冷蔵庫のドアを長時間開けないなど、消費者の心理に「省エネはこんなに面倒くさい大変なことなんだぞ」と植え付けているだけのように思える。
本当に、電力消費を抜本的に大幅に下げるつもりで有れば、政府は貸付金を予算化して建築物のグリーン化の推進を行えば良いのである。この貸付金は電力料金の下がった分で必ず回収可能である。
それでは何故それをやらないのか、実際に日本中の建築物のグリーンビル化ができると単純計算で総電力需要は30%下がる。これだけで原発50基分を上回る節約ができる。これを、政府は経済の後退につながると考えているふしが有る。確かにこれにより電力会社の規模は2/3になるので電力会社は反対するであろうが、ビルのグリーン化の為の新しい産業、雇用が生まれ税収も増える。これがグリーン経済への移行と言うことである。
そして、これは建築物での話であって、重工業、農業、交通の各分野でグリーン化を行えばエネルギー需要の全体が80%節約できる。そうすれば化石燃料はほとんど必要なくなる。
地球環境を次世代へとつないで行く持続可能社会へ転換して行く為には、これまでのエネルギー浪費型社会からの脱却が必要なのである。当然エネルギー産業には大幅な構造改革が求められる。
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