問題山積みの制度
EUは京都議定書の発効と同時に、強力にCO2の排出権取引を進めて来た。GHG(地球温暖化ガス)の20%はCO2以外のガスであるが、これらを取引する市場は無く、CO2に換算して取引が行われている。NOxとフロン系のガスについては2012以降に排出権取引の導入が検討されることになっている。EU-ETS(欧州排出権取引スキーム)はすでにCO2以外のガスも含みGHGの40%をカバーしている。
EU-ETSの要求項目の一つに設備の新設については毎年の報告が義務付けられており、もし購入量以上のGHGの排出が認められた場合には、直ちに不足分の排出権の購入が求められる。余った場合は当然売ることができる。
欧州ではこれらの取引はECXと呼ばれる排出権取引市場で取引されている。
排出権取引きには数々の問題も指摘されている。農業における単一種栽培、原子力発電、深海海底油田にCO2を注入する方法での採掘などがCO2排出権市場に参入してくることである。これらは一見CO2の削減に寄与するように見えるが、総合的にみて地球環境をより破壊するものであるからである。
その他の問題としては、1989年に実行されたモントリオール議定書が、フロンのようなオゾン層破壊化学物質の使用縮小と代替フロンへの移行に注目しすぎたあまりに起きた問題がある。HCFC-22が代替フロンとして承認された時に、開発途上国が競ってこの代替フロンの製造を始めた。HCFC-22(これも近いうちに禁止物質になる予定で有るが現在は製造可能である)を製造する時にHFC-23と言う悪質な副産物ができることである。この物資はCO2の11,700倍の温室効果を持っている。このHFC-23を無害化処理をすると排出権が発生する。HFC-23の無害化処理に掛る費用は、それを行う事で得られる排出権に較べると僅かなもので、大きな利益が出る。HCFC-22を製造販売して得る利益よりも副製品のHFC-23の無害化をする方が儲かることがわかり、開発途上国が競ってHCFC-22の製造を始めたのである。その結果、欧州のCO2相場は下がった。
その他、メキシコの緑化計画で発生した排出権を市場は高値で購入したが、後日これは森林を破壊して巨大な養豚場を作る計画であった事が判明すると言うような事も起きており、CO2排出権取引には制度上、まだまだ解決しなければならない問題が残っている。
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