水不足を招いた元凶は灌漑農業
淡水資源はこのままで行くと後10年で危機的な不足となる。淡水資源不足の最大の元凶は灌漑農業であるとする報告が国連環境開発(UNEP)から2006年に出されている。
世銀をはじめ先進国が開発途上国に対して行って来た農業援助は全て灌漑農業であった。大規模な灌漑用水池、用水の為の運河建設、田畑を湛水させる灌漑農業を広めてきた事に起因している。灌漑農業は莫大な水資源を使用するが、実際に作物が必要とする水は供給される量の数%でしかない。そして、灌漑農業に使われた水はほとんどが蒸発してしまう為に地下水として還元されるのは30%以下である。今日、都市や工業では水資源のリサイクルは90%まで行われているのに、農業では30%以下のままである。
航空機を使っての農薬散布に代表される大変に大雑把な農薬の大量散布や高圧スプリンクラーによる撒水、化学肥料の大量使用などによる環境負荷は大変大きい。農業分野のエネルギー使用や、GHG(地球温暖化ガス)排出は18%と大きい。現在のシステムを全く変えることをしなくても、適時適量を細かく計画的に行うだけで30%の節約が可能であるとしている。また、僅かな投資で実現可能な点滴灌漑にシステムを変えれば70%の水資源と95%の農薬、肥料の節約が可能になるとしている。
また、無制限に水をやるだけのではなく、適正な時期には農作物を水不足状態にする事で逆に収量と品質が向上する方法も開発済みであるとしている。地球の淡水の70%を消費している農業の水効率の改善が唯一の水資源問題の解決法であるとしている。
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