ロンドン2012では史上初の持続可能性社会への実験が行われている
毎日オリンピックを見ている人も多いと思うが、ロンドン・オリンピックが史上初の持続可能性を追求したグリーンオリンピックであることは余り報道されていない。主催国である英国は誘致の段階からグリーンな大会をメインテーマに掲げ、計画は環境・農業・食糧局(Defra)と国連環境計画(UNEP)の助言のもとに作られ、持続可能社会への触媒の役割を果たすと共に東ロンドンの環境を変える事で英国国民にグリーン経済への変革への勇気を与えるものとしている。
WWFが提唱するOne Planet Livingをそのテーマに掲げた。現在の英国人が行っている生活様式では3個の地球を必要とするところを1個の地球での生活を可能にする事をオリンピックを通じて示そうとしている。
会場となったオリンピックパークは東ロンドンと呼ばれる地域で、過去には汚染物質を垂れ流した工場群が有り土壌汚染の為に人が住めなくなり、ロンドンの廃棄物処理場となっていた地域であった。旧工場を取り壊し200万トンの土を土壌洗浄と言う技術で蘇らせた。古い骨材は98%が新施設の建設に利用された。施設建設の為の輸送には64%が鉄道を海上輸送が使われた。オリンピックスタジアムの建設には1万トンの鉄材が使われたが、これはこのクラスの建築物では従来の1/10の量である。天井のドームには廃棄処分されて野ざらしになっていたガスパイプがそのまま利用されている。
競輪場はほぼ100%自然換気のみで、88本のライトチューブを使い自然光を取り入れた照明は僅かな電力しか消費しないデザインである。屋上に降った雨はタンクに集められ中水道としてトイレや庭の水やりに使われる。
100ヘクタール以上の公園は人と野生動物の為に作られ4000本の植樹と30万の草花が植えられ、閉会後もロンドン市民の憩いの場として提供される。
交通機関の設計もユニークで、競技場へのアクセスは徒歩、自転車、公共交通機関のみとなっている。総延長80kmのサイクルパス(自転車専用道路)が作られ、6000台のレンタル自転車も用意された。
ところで、今回聖火リレーで使われたトーチはアルミニウム製で燃料には食用廃棄油から作られた燃料が使われた史上初のゼロ・エミッション聖火であった事はご存じだろうか。
日本のメディアの目は日本選手のメダルの数だけでなく、主催者の主張するテーマも報道すべきでは無いだろうか。
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