自然環境に対して謙虚なライフスタイルに
Radio Feuilleton 2011.6.14のフォン・ヴァイツゼッカー教授の話の続きです。
今から150年前の労働生産性はだいたい今の20分の1でした。これまでの産業の歴史は労働生産性の向上を追い求めて来たと言えます。そして労働生産性の向上と並行して労働単価も上げられてきました。労働生産性が向上した結果を持って労働組合は賃金の上昇を獲得する事ができ、雇用者は賃金の上昇を理由に更なる合理化を進める事ができたのです。このように労働生産性と合理化を軸に労働者と雇用者は手に手を取って20倍を達成したのです。
そして労働生産性の向上を追求する時代は終わりました。今や労働力は溢れているのです。私たちはこんどは資源生産性、つまり省エネの追求をするべきなのです。
そこで私は前年に達成した省エネのパーセント分だけ、環境税を課してエネルギーの価格を上げる事を提案しているのです。例えばドイツの自動車は2011年に約1.5%の燃費向上を達成しました。ですから2012年には燃料に1.5%の環境税を付加してガソリン代が1.5%上がったとしても同じ走行距離に対するガソリン代は変わりません。このようにすれば環境税が人々を苦しめるものであるとか、産業を亡きものにするものなどと言う議論は出ないはずです。
つまり、省エネのテンポに合わせて環境税を使ってエネルギー価格を、過去に労働生産性が上がると共に賃金が上がって行ったように、徐々に上げて行くのです。
ここで考えなければならないのは社会的弱者に対する対策です。省エネ開発によって作り出される最新式の道具や製品は社会的弱者に行きわたるまでには時間が掛り、彼らは省エネの恩恵を受けるのはずーっと先の事になります。ですから彼らのライフラインを守る制度が必要になります。生活に必要なエネルギーと水には課税はせず、それ以上の使用量に対してのみ課税をする仕組みを作る必要が有ります。また、伝統的産業等で省エネ達成が困難な産業や職業にも配慮が必要です。エネルギーを無駄に使い続ける人や産業に厳しい課税となるのです。
私たちがこれまで破壊し続けて来た環境に対し少しでもお返しする事を考えるなら、少しは謙虚になりエネルギーの使用を控えるライフスタイルとなって行く事は自然な事で有ると思います。
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