ジオポリマーはソ連がセメント不足に対抗するものとして再発見
セメントは世界で年間2.5ギガトンと言う途方も無い量が製造される工業製品で、その時に1.8ギガトンのCO2を排出して、世界の地球温暖化ガス(GHG)排出量の6%の責任がある。新興国の建設が進む中2050年にはセメントの需要は5ギガトンになると予測されており、CO2環境負荷は3.6ギガトンの排出量となる。
これは現在広く使われているポートランド・セメントの場合であって、これをジオポリマー・セメントに変えることで70%のGHG排出が減少されることが解っている。
このジオポリマー・セメントを再発見したのは、ウクライナの科学者ビクター・グルコブスキー(Viktor Glukhvsky)である。1960年台のソ連のセメント不足を補うためにポートランド・セメントの代替品を研究していた。鉄鋼の盛んなウクライナで多量に廃棄されていた高炉スラグをセメントとして使う研究を進め、住宅、鉄道枕木、土管、上下水道水路、工場の床、プレキャスト建材等広く使われるようになった。しかし冷戦期間中でこの技術が西側に知られる事は無かった。1990年になって始めてジオポリマー・セメントが学会に発表されたが、注目を浴びることは無く1994年と1999年の会議録に掲載されただけで終わっている。
2006年に「アルカリ活性セメントとコンクリート」と題して発表されたものにオーストラリアの研究者が着目して、2008年にグルコフスキーと共同でメルボルンに研究所を設立してこの研究所から発表している。
この中で、ジオポリマー・セメントは強度が優れていること、耐酸性、耐塩素性に優れ寿命が長いこと、凝固時の酸素の透過度が少ない為に骨材の鉄骨や鉄筋が錆びる事が無く強度が保てることなどの優れた面が報告されている。
ジオポリマーの名付け親はウクライナの科学者で1970年台にセメント技術研究をしていたジョゼフ・ダビッドビッツ(Joseph Davidovits)である。彼はエジプトのピラミッドは巨石を積み上げたものではなく、その場で型枠にジオポリマーを流し込んで作った人口石で出来ていると主張したが、エジプト政府は否定している。
この段階ではジオポリマーがエネルギーを使わない事には全く着目されていない。現在コンクリート建築の寿命が50年と言うのが常識になっているが、ジオポリマー・セメントにすれば150年〜200年になると言われており、大きな省資源となるが、建設業界などには有りがたく無い話しとして歓迎されていない。
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