ダンテの森    
01 Sep 2014 10:29:08 pm
リニア新幹線着工
巨大プロジェクトの予算は必ず数倍に膨れ上がる。
ブログ管理人

 9月1日は防災の日であった。あちこちで防災訓練が行われている模様をメディアはこれで備えは万全とばかりに伝えている。ニュースは東京オリンピックが少なくとも予算の3倍は掛かりそうだと報じている。その理由は、材料費などの値上げが理由だと言う。ボート場の建設予算は65億円だったものが400億円以上になると言う。材料費がわずか1年そこそこで6倍以上になろうはずが無い。これはオリンピックを何が何でも誘致したかったが為の第二の大嘘である。第一の大嘘は言うまでもなく、福島第一原発が「制御されている状態である」と言った安倍首相の大嘘である。

 東京オリンピックの売りは、東京には施設が既に有るので追加の建設は最小で済む低予算オリンピックであると言うものであった。これは、誘致の為の嘘の他何でもない。建設巨大プロジェクトは常に予算を上回る。これは常識である。予算など無いに等しい。巨大プロジェクトは始まってしまえば、まず止まる事は無い。建設を七割ほど終わったところで、想定外の事態――これは、予想外の天候、予想外の地質、予想外の地下水、予想外の人手不足など何でも良い――が起きる。そして、建設事業者は予算の倍掛かると言う、それでも工事の七割で止められてはどうしようもないので、結局続ける事になる。土建屋の常とう手段である。

 リニア新幹線が着工する。まずは品川―名古屋間の地下深くトンネルを掘って品川―名古屋間の290kmを5.1兆円の予算で作れることに今の所はなっている。大阪まで延伸しても9兆円だと言う。一年ちょっと前に、4500億円と言っていた東京オリンピック予算が既に三倍つまり1兆3500億掛かると言っているが、この見積書を作ったのと同じ顔触れのゼネコンが作ったリニア新幹線の見積書である。着工直後に倍になり、数年の内に3倍となって行く事は日を見るよりも明らかである。それでも、アベノミクスの考え方から言うとGDPが増加する事なので、「ええじゃないか」となる。ゼネコンにさえお金をぎゅうぎゅう詰め込めば、景気が良くなって世の中が良くなると信じているいる連中にとっては、予算は守るべきものでも何でもない。

 現在の新幹線は乗車率55%位でここ10数年推移しており、増加する様子はない。東海道新幹線などは、10分も待たずとも次の列車がやってきて、必ず座れる。こんな交通機関は世界のどこにもない。60%の乗車率と言うのは、旅客が最も満足でき、経営的にも採算が取れる理想的なバランスである。だから、快適な列車の旅が楽しめる。東京―大阪が2時間30分と言うのも、約500kmが2時間半と言うのは、飛行場へのアクセスが長く、待ち時間が長い飛行機と変わらない時間である。これが1時間になって、本当に助かる人はそんなにいないと思う。それに、昔病院に有ったエアシューターのようにパイプの中を高速で送られる、全線トンネルでは景色を楽しむ旅の楽しみは皆無で、いかにも物流の一部と言う感じがして面白くない。

 JR東海が私企業として全額負担して建設すると言うが、今9兆円と言っている建設費が20兆円になったらどうするのか。建設を請け負うコンソーシアムと見積もり金額以上は一切支払わない旨の契約でも結ぶのであれば話は別であるが、そうでない限り開業前から巨額の負債を抱えた事業体が生まれる。政府は特例法を作って、リニアの事業者をJR東海から分離し、開業時から巨額の負債を抱えた会社を作る事になるだろう。

 リニア新幹線品川―名古屋が完成する2027年には人口は1億2100万人、生産人口は7260万人で2010年比で11%減、大阪まで延伸する2045年には生産人口は5720万人で35%減になっていると推測され、旅客数もそれに連れて減少すると考えるのが通常の考え方である。旅客数が減少する事が分かっているのに第2の新幹線を作ると言う発想は、鉄道を経営するものから出てくるものであろうか。ちょうど原発を誘致する自治体のように、政府の意向に従っていればあとは面倒を見て貰えて悪いようにはならないはずと言う考えなのだろうか。その付けを全部回される納税者は良い面の皮である。

 リニア新幹線を実証する事で、世界に日本のリニア新幹線の技術を売り込むことができる。その為には何が何でも日本で実用化する必要があると、言う人もいるようであるが、実証は外国でだってできる。例えば、米国のワシントン―ニューヨーク間にリニア新幹線を作る費用の半分を日本が出しましょうとやれば、米国だって興味を示す。そこで良いものを作って米国に提供できれば、リニア新幹線のショーウインドーとなる。米国内でのその後の長距離新幹線にも日本が名乗りを上げる事ができる。それを持ってEUや中南米へも市場開拓ができる。何もショーウインドーは日本になければならない事はない。

 現在の新幹線に比べると、リニア新幹線は5倍のエネルギーを消費する。だから東京―大阪間に無理やり導入してエネルギーの消費量を増やす事はないが、現在は自動車や飛行機でしか行き来していない、米国の大都市間輸送はリニアに換える事で数十分の一のエネルギー消費になる。これから高速鉄道を導入するところには十分魅力的な輸送機関となる可能性を秘めている。

 軍隊や兵器や原子炉を海外に売ろう等と考えずに、日本のリニア新幹線は即刻止めて、そのリソースをそっくり使ってリニア新幹線を海外に売るプロジェクトでも作ったらどうかと提案する。
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