政府がCCS(Carbon-dioxide Capture and Storage)、二酸化炭素の回収・貯蔵を本格的に始めると言う。
ブログ管理人
CCSとは、気体として大気中に放出された、あるいは放出される直前の二酸化炭素を人為的に集め、地中・水中などに封じ込めること、また、その技術のことである。
植物は太陽エネルギーを使い、光合成により二酸化炭素の吸収と貯留を行っているが、それを化学・工学的に二酸化炭素を分離回収し、それを貯蔵・利用する手法である。現在、人類が化石燃料を燃やした為に大気圏に放出されたCO2の濃度は約400ppmに達している。これは過去80万年間において最高の濃度で、その増加の殆どは過去200年に起きている。
現在の気候変動は、CO2濃度の上昇により温室効果が増え、地球の平均気温が0.6℃上昇した為に起きていると考えられる。以前は気候変動と人類の経済活動との関連は無いとする「環境懐疑派」も存在したが、本年4月のIPCCが出したAR5、第五次評価報告書により、95%の確率で人類の経済活動がその原因であると発表されたものに公に反対するものはいなくなってはいるが、日本政府のように無視・無反応を決め込んでいるところもある。
気候変動は、今後ますます激しくなり気候の狂暴化は進んでゆく。例え現在排出しているCO2を全て止めたとしても現在大気中にあるCO2の量だけで地球温暖化はさらに進み、気候変動も進み、もう我々にはそれを止める手立ては無い。そこで、緊急処置として既に大気中に放出されているCO2を集めて地中に埋めて大気中のCO2濃度を少しでも下げようとするのがCCSである。
CCSにはCO2を他の物質に吸収させて固定する吸収法があり、化学吸収法、固体化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、深冷分離法、酸素燃焼法などが提案されている。
他に地中隔離法には、炭層固定、帯水層貯留、油層・ガス層貯留、鉱物固定、海底下ハイドレート貯留、ゲスト分子置換法、メタンへの変換があり更に、海洋隔離法:溶解・希釈、海底貯留、分解法:プラズマ分解法、金属と反応させる方法、メタンを利用する方法、化石燃料の分離、化学製品への利用:化学合成への利用、還元、バイオリアクターを利用する手法などいろいろな方法が考えられるが、いずれの方法も大変高価で、CO2を1トン回収・輸送・貯留するのに4,000〜6,800円掛かる。電気を1MWh発電すると約1トンのCO2が排出されるので、電力料金を1kWhあたり20円として2万円分の電力を作ると4000〜6800円かけてCO2を回収・貯蔵しなければならない。
安倍政権は、CCSで日本のCO2排出量のバランスを取ろうと考えているようであるが、日本の場合、すべての建築物を低エネルギー改築する事で、約25%のCO2削減ができる。現在安倍政権が出している2020年に向けてのCO2削減目標はゼロであるので、まず取り組むべきは建築の低エネルギー改築であることを知るべきである。建築の低エネルギー改築に掛かる費用は建築の新築費用の約10%程度であり、ほとんどの場合、改築後節約されるエネルギーコストの10年分程度で改築費が回収できる。
しかし、産業界は安上がりな政策より、国民の税金を湯水の如く使うビッグプロジェクトの方がお気に入りである。ましてや、低エネルギー建築のように、長期的にも電力需要が減少し電力産業の売り上げが下がるような事は望まないからである。 |