朝日新聞主催の朝日地球環境フォーラム2014の記事を読んで
ブログ管理人
10月28日(水)の朝日新聞朝刊に3ページにわたって、去る10月1日と2日に東京・帝国ホテルで開催された朝日地球環境フォーラム2014の様子がまとめられていた。これは朝日新聞主催、テレビ朝日共催、国立科学博物館特別共催で、イオン環境財団、NTTグループ、京都産業大学、サントリーホールディングス、JR東日本、TOTO、トヨタ自動車、パナソニックの特別協賛、三井不動産、三菱ケミカルホールディングス協賛、外務省、文科省、農水省、経産省、環境省後援と言う日本の産業界が全面的に後援して賑々しく開催されたものである。
プログラムは、基調講演、パネル討論、対談、講演が2日間ぎっしり行われたものである。プログラムは次にURLで見る事ができる。
[url]URL: http://www.asahi.com/eco/forum/program/[/url]
新聞記事で紹介されていたものは、最初が元スキー選手の荻原健司氏が、氷河の後退や、気候変動によってオリンピック冬の大会開催ができなくなった都市があることなどが紹介され、長野県白馬村でEVの活用が行われていることが話されたらしいが、オリンピックをテーマにするのであれば、前回のロンドンオリンピックがエコをテーマに開催され、どのように省エネされたかを紹介すべきであった。(2012年8月4, 5, 14日のブログ「ダンテの森」に詳しい)
さらに庭の木の種を1万個集めて東北の被災地に送って防災林に役立ててもらった主婦の話が有ったが、防災林として役に立てる為には、根を地中深く張る灌木でそれもその土地にもともと自生しているものでなければならないと言うことを考慮しなければならないので、東京の家庭の庭のどんぐりを集めてもそれが直ちに東北に植樹して防災林になるとは限らない。
またツイッタ―やフェイスブックで環境問題を語る仲間を募っている高校生の話は、少なくとも環境問題に興味を持ってもらう方法としては有効なのかも知れないが、紙面はこのような小さなことから始めようと訴えている。しかし、今はそんな小さなことを始めると言う段階では無く、世界は経済構造に変革を起こそうとと進んでいる事を知らせるべきである。
オリンピックでの環境対策について、日本工業大学の三坂育正氏が打ち水、すだれ、水ミストによる体感温度の低下などで都市のヒートアイランド対策が進んでいると述べた。この大学教授のレベルは、余りにもお粗末である。都市のヒートアイランド現象は、まず建築物が消費するエネルギーの大幅削減、これは建築物の低エネルギー化とパッシブ暖冷房により最大90%の省エネができる。その上で、都市内の自動車交通の大幅削減を、シンガポールやロンドンのように都市通行税を掛けることで行うなどの抜本的対策が必要である事は常識である。打ち水にすだれとは、第二次大戦の終わりの日本が竹やりで戦おうとしていたことを連想する。こんな大学教員はいらない。
デンマークから招かれたフィン・モーテンセン氏は、デンマークではエネルギー税を上げる事でエネルギー消費を削減した事を紹介している。やっとまともな意見が聞けた思いである。この講演について新聞はもっと紙面を割いて詳しく報道すべきである。
スポンサー企業のTOTOは、節水トイレを世界に広めようと訴えた。TOTOの節水トイレには、日本で発明された温水シャワーと便座暖房が付いている。特に便座暖房は、日本だけで1億台ありそれだけで火力発電所一基分の電力を使っている。住宅や事務所の低エネルギー改築を行うと建築物の気密性が格段に良くなり、どこに行っても同じ温度の住宅や事務所になる為に、暖房便座はいらなくなる。世界に節水トイレを広めるなら、日本建築の弱点を補う暖房便座やシャワー便器を取り外して行うべきである。EUでは無水小便器が普及していることを、このTOTOの重長佳巳氏はご存じないのだろう。
同じくスポンサー企業のJR東日本は、すでに90%の車両が省エネ対策済であると胸を張るが、2020年までに8%のエネルギー消費削減がその目標であるとのことで、これは何もしていないに等しい。
日本総研の井熊均氏は、右肩上がり経済を追っていては持続可能社会は作れない、人口減少を控えている日本は経済が縮小しても福祉が行き届く社会システムを指向するべきと至極まともな話をしている。これが、本来されるべき議論のメインテーマとなるべきものであるが、紙面はそれほど割かれていなかった。
環境省の鈴木正規事務次官は、差しさわりの無い話で終えている。 |