ダンテの森    
06 Nov 2014 08:56:20 am
マスコミの戦略に騙されるな
ワームビズは省エネのネガティブな面を強調する為のPR戦略
ブログ管理人

 朝夕の空気が冷たく感じる季節となってきた。先日から気になるのはTVでのワームビズ報道である。部屋の暖房温度を下げて暖かく過ごす為に、暖かいセーターを着込んで仕事をしようとか言うもので、環境省が先頭になって進めているもので、一見省エネ推進のPRに見える。

 このキャンペインの狙いは、我慢すれば省エネができると言うものであるように見えるが、その本音は省エネと言うものには我慢が必要と思わせ、省エネには犠牲がつきものとの印象を与えるもので、本来の問題を隠すことに目的がある。実際に省エネしなければならないのは我々が暮らしている住居、事務所、学校、工場などであって、必要なのは建築物への低エネルギー化対策であり、我々個人が我慢を強いられる必要は全くない。

 建築物の断熱性能を上げ、気密性を良くし、熱交換器を使った強制換気をすることで建築物の省エネは画期的に改善する。その為に新たな技術開発は全く必要なく、現存する技術をシステマティックに組み合わせるだけのことである。

 ブログ管理人の住む東京都町田市では、学校建築の低エネルギー化改築が東京都の予算で順次行われている。まず公立の小中学校11校が選ばれて、低エネルギー化が行われた。その内容は、校舎に外側断熱をし、窓枠を熱ブリッジの無いものに換え、窓を2重ガラスにすると言うもので、熱交換器を使った強制換気システムは入っていない。それでも改築後は光熱費が30%下がったと言う。これに熱交換器を使った強制換気システムを加えれば80%の効率アップが図れる。

 当ブログでは何度も書いているが、1929年に建てられたニューヨークのエンパイアステートビルは竣工80周年事業として2009年に低エネルギー化改築が行われた。6500個以上有る全ての窓枠を断熱仕様に変更、暖房用ラジエータ設置場所の断熱、エアコンを全て最新の高効率のもの置き換え、コンピュータ総合ビル管理システムの導入、各テナントが消費電力をモニターできるシステムの導入、照明の100%LED化、68基の全てのエレベータを回生制動付きの最新のものに改造などで、その総工費は5億5千万ドル(約620億円)であったが、改築以来毎年2千万ドル(約22億6千万円)のエネルギーコストが下がったと言う。エンパイアステートビルでも熱交換強制換気システムは採用されていないが、これを加えると全体で80〜90%の低エネルギー化が可能となる。

 低エネルギー化改築が終わった建築物は、ちょうど魔法瓶のようなものであり、その建物の隅々まで同じ温度となる。そのため、壁、天井、床も同じ温度となり、その輻射熱の為にその中にいる人は大変快適に感じる。日本の家のように冬場にトイレやふろ場が寒いなど言うことはなく、従ってトイレ用の暖房便座の必要も無い。完全に断熱された建築物では、人体が発する熱量(約100W)や台所の煮炊きの熱だけで殆ど暖房と言うものが必要とされない。夏場は、家全体で一台の小型エアコンで十分である。外気温度が夜間には17℃を下回る地域や季節にはエアコンの使用は全く必要なくなる。これがパッシブハウスの考え方である。パッシブ(アクティブの反対)冷暖房を使った家と言う意味である。

 パッシブハウス基準は、欧州ではすでに義務化されている。ドイツや北欧の環境先進国では、その基準が年々厳しくなっており、2021年以降はエネルギーゼロの建築物しか建築が許されない。現在すでに多くの国で、エネルギーパスと言うエネルギー消費の状態を証明する証明書なしには、建築物の売買も賃貸契約もできない法律になっている。欧州が2020年までに40%の省エネ削減が可能としているのに大きく寄与している。

 もし、全世界の建築物が全てパッシブハウスになったとすれば、地球全体のエネルギー消費がそれだけで36%減少することになる。実は、これがエネルギー関連産業には大きな脅威なのである。もちろん、原子力発電の必要性はなくなるし、シェールオイルも必要無い。オイルビジネス、電力会社、電力関連企業、家電メーカー、プラントメーカーなどが恐れているのはこのような本物の省エネが広まった時には、自分達の存在意義が無くなり、既得権益を失うと言うことが怖いのである。

 最近の日本の電力会社はこぞって大幅増益決算を出した。これは次に、電力料金の値下げをする準備であると考えられる。電力料金を上げ過ぎた結果、ここのところ順調に消費電力が減少している。これは環境にとって大変に好ましい状態である。しかし、このようなじりじりと減少を続けるのは電力会社にとっては好ましくない。生産人口の減少を加味すると更にエネルギー消費は減少傾向となろう。それはまずいと、急きょ値下げをし、マスコミを総動員して省エネは難行苦行であるとの印象を与えて電力消費の増加を図るものと思われる。日本のメディアのPR戦略に騙されてはならない。
カテゴリー : ブログ管理人 | Posted By : dantesforest |
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