若杉冽著「東京ブラックアウト」を前作「原発ホワイトアウト」と共にお正月休みに。
若杉冽の「東京ブラックアウト」を読んだ。ベストセラーとなった前作「原発ホワイトアウト」の後編である。各章は現実の大手日刊紙のクリップからはじまり、この新聞記事はこれに続くストーリーの舞台装置である。読者は、この記事の存在により、フィクションが現実であるかの錯覚に入りこむ。登場人物は全て現存する人物に置き換えることが、読者にとってそのネーミングからも可能なようになっており、なおさら現実世界の出来事のように作られている。
著者の訴えているのは、ほとんど的を得たもので本の帯に書かれた「現役キャリア官僚のリアル告発ノベル」と言うのが、決してうたい文句だけではないことは、取り上げられたテーマについて興味を持って日常少し詳しく新聞を読んでいる読者にとっては良く分かる。
前作、本作を読むことで、なぜ日本では建築物の低エネルギー化など欧米では主流となっている本格的な省エネが行われることなく、クールビズやウオームビズなどと言う小手先の省エネしか行われず、また欧米では既に基幹電力の一部となっている太陽光発電や風力発電に代表される再生可能エネルギーが日本ではいまだに一人前のエネルギーになれないのかが良く理解できる。
また、これから日本で本格的にエネルギー改革を叫ぶ運動をしようとする団体の活動家にとっては、その敵の巨大さ強大さを知る事になり運動戦略の構築への手がかりとなろう。
まだ前作を読まずにこの本を読もうとされている方には、まず前作「原発ホワイトアウト」を読まれてから本書を読まれる事をお勧めする。 |