ゴミ処分場への投棄から焼却、リサイクル、都市鉱山へ
数百年にわたってゴミは衛生上の問題でしかなかった。道路や街を清潔に保ち、農業、手工業、家庭からできるだけ遠ざかったところにゴミは溜めておかれた。食品ごみは、コンポストにされるか家畜の飼料にされた。一昔前の工業においては殆どの材料は再利用されるようなシステムが作られており、出されるゴミの量も少なかった。
19世紀になってそれまでは考えることができなかった様な大量のゴミ、石炭ストーブから出される石炭の燃えカスが出されるようになり初めて廃棄物処理が問題となった。それ以来ゴミの排出量は増加の一途をたどっている。
プラスティック、ガラス、釘やヒンジの付いた木材、家具、日用品、事務機器がゴミとなっている。かなりの間ゴミは都市近郊に貯めておくことが一般的であった。しかし、虫やネズミの発生、地下水の汚染、悪臭などによりこの方法は継続が不可能となった。最近は、ゴミの投棄は禁止となり焼却炉による処理が一般的になってきている。処理時にだされるヘドロは肥料に変わるが、重金属の混入が無いかに神経をとがらせる必要がある。
1980年代に入っていくつかの国、特に日本とドイツではゴミを資源と考える動きが出て来た。ゴミの中から再利用可能なものを見つけ出して資源とすることでゴミの量も減らす事ができる一石二鳥の考え方である。
ドイツでは1980年代に包装廃棄物政令が出された。この法律により、販売業者は包装材の直接回収か回収システムを用意することが義務付けられた。これはまさにグリーン経済の誕生の瞬間とも言えるできごとであった。これにより70%が再利用されるようになった。次の段階は都市鉱山と言われる貴金属やレアメタルの回収である。ドイツでは1996年に循環経済・廃棄物法が制定された。
ゴミの処理法として現在一般化している焼却炉による処理は衛生面や大気汚染面には配慮されたシステムになっているが、貴金属やレアメタルの回収には向いていないので、新技術の開発が望まれている。ゴミを出さない製品設計が求められている。
このテーマについては林哲裕氏著「ドイツ企業の環境マネジメント戦略」に詳しく取り上げられている。
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