既得権益を守ろうとする声は強く、大きい
ファクター5が掲げる、エネルギー効率が上がりエネルギー消費が減少した分に見合うエネルギー価格を上昇させることで、消費者が受ける同一サービスに対する同一価格制度を導入する事で継続的に資源価格を上昇させ続けるべきであるとする考え方は、世界中の経済界や資本家から強い反対を受けるであろう。経済界では常に、現在大きな権益を得ているものが必要以上に強い発言権を持っているものである。
国際的に見て高いエネルギー価格となっている日本でも、環境問題の対策として政策的に高水準になっている訳では無いので、その事情は同じである。
省エネの成功により売り上げが下がる企業が有る事は確かであるが、利益を増加させる企業の方が多くなる事が分かっていても、従来の権益を守ろうとする声の方が強く、大きい。環境税や資源価格の上昇に対して経済の後退を懸念する風潮は世界中に蔓延している。
アメリカで行われた労働者に対する世論調査では、33%の回答者が環境問題対策による改革により職場を失う心配が有ると答えている。しかし、この心配には確たる理由は無く、省エネは景気を後退させるからと言う漠然とした思いこみが一般的になっていることから来ている。
実際に、環境対策を講じた企業で人員整理が行われた例は少ない。全米で毎年発生する100万人単位の解雇の主な理由は、消費者傾向の変化による販売の悪化、世界的な価格競争に対応しきれず規模を縮小するなどで解雇に至るものがほとんである。
環境対策は省エネであり、省エネは景気の後退=雇用の減少との図式がまかり通っている。これは、既得権益を守ろうとする集団が、ひとかけらたりとも自らの取り分を失いたくないとする考えから出ている。
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