日本でもパッシブ冷暖房のオフィス・テナント・ビルが建設中である。
地球温暖化ガス(GHG)排出源の40%は建築物であるが、その中では冷暖房と照明が主な要因になっており、省エネビルやグリーンビルではまず、この二つに焦点を当てて省エネ対策を講じる。
商業ビルの大手三菱地所は環境モデルビルとして「(仮称)茅場町計画」を新築中である。快適性・生産性と環境性能の両立を目指し、知的照明システムとハイブリッド輻射空調システムを日本で初めてテナントビルに導入をうたい文句にしており、通常のビルに較べ45%のエネルギー削減できるとしている。
輻射空調とは、従来のエアコンが室内の空気を暖めたり冷やしたりしているのに対し、このシステムでは天井面に冷温水を流し、天井面からの輻射で人体と熱エネルギーのやりとりをする方式の事である。空気はもともと温度を伝えにくい断熱材である。それを暖めたり冷やしたりするのには多量のエネルギーを必要とする。熱エネルギーは必ず高い方から低い方へ移動する。この移動は輻射に依って起きるが、輻射と言うのは熱エネルギーを光とする考え方である。熱エネルギーを運ぶ遠赤外線を使った、光冷暖房についてはこのブログの2012年8月1日に書いた。
遠赤外線が冷房にも使われる事を理解してもらうのが困難だと思っての配慮であろうか。三菱地所のプレスレリースには遠赤外線と言う言葉には触れられていない。また、遠赤外線を効率よく輻射、反射、屈折させる為には天井、壁にセラミック塗装が必要だと思われるが、その記述も無い。
また、このビルは夏の夜間に冷温水からの輻射により躯体のコンクリートと鉄骨そのものを冷やしたり温めたりして躯体に蓄熱を行い、昼の冷暖房の助けにする。その為には外断熱構造となっており、窓ガラスは高性能Low-Eペアガラスが使われている。日射遮蔽ルーバーで日照を制御する。まさにパッシブハウスの考え方となっている。
ともあれ、少しずつではあるが、約20年遅れて日本の建設業界も重い腰を上げて来たようだ。
当プレスレリースのURL:
http://www.mec.co.jp/j/news/pdf/mec120426.pdf
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