エネルギー効率が上がっても消費は下がらなかった。
エネルギー効率「省エネ」は20世紀半ばに一度だけ大変に注目された事があった。それは1973年の第一次オイルショック、それから1978〜1982年にわたっての第二次オイルショックの時である。
原油価格の高騰の為に、石炭、原発の見直しや、当時流行していた石油暖房の見直しが叫ばれている頃であった。そして、数千年の人類の歴史で唯一のエネルギー源で有った再生可能エネルギー(水力、風力、太陽熱)などに、当時の科学者や技術者はエネルギー・ルネッサンスと名付けて俄かに注目していた。
そして、エネルギー効率を改善することつまり省エネも、石油依存から離れる為の手段の一つとして考えられるようになった。英国では省エネを「第五の燃料」と呼んだくらいである。石油、石炭、原子力、太陽に続くのが「省エネ」と言う新しいエネルギー源だるとする考え方であった。これは各国に広がり、スエ―デンは省エネ基準を厳しく定めた建築基準法を制定した。アメリカはCAFE(Corporate Average Fuel Economy)でエネルギーの効率アップを推進した。
1970〜1980年にかけてアメリカのDaniel KhazzoomとイギリスのLeonard Brooksはこれらの省エネ推進の総合的な結果がどのようなものであるのかを知る為に調査を行った。その結果は驚くべきもので、エネルギー効率の改善が行われていたのに拘わらずエネルギーの消費は減るどころか増加していたのである。
二人の研究者はそれぞれ、異なった仮説を立てて、この現象を説明しようとしたが、それは省エネが進んだ為に生れた利益の使い道として、新たなエネルギー消費をともなう産業が興った為であった。
このグラフの1978〜1982年まではエネルギー消費が後退しているが、それは1982年が当時としては原油価格がピークであった事に関連しており、その後価格が沈静化した後は消費量は増え続けている。エネルギーの消費量は、エネルギーの価格とより深い相関関係にある事が分かる。
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