安いエネルギー価格が都市周辺に車なしでは通勤さえできない住宅地を造成した。
ファクター5ではアメリカでのエネルギー政策の失敗がリーマンショックの原因であったとの仮説を唱えている。これについては当ブログの2011/9/17と2012/2/6でも取り上げているので、参考にしてもらいたい。
乗用車に対する課税が引き上げられた事に対抗したデトロイトはトラックの税金並みで乗用車の豪華さ快適さを備えた新カテゴリーSUVを発明した、大きな重い車体と4輪駆動と豪華な車内、大きな強力なエンジンを備えており、燃費は3〜6km/ℓと大変に悪い。この車を使って会社に通勤する事は多くのアメリカ人の夢となった。
この車なら片道100kmのフリーウエイも苦にならないと、都市の周辺に新たな宅地が造成されて行った。図は1992年から1997年までの間に農地や山林から宅地に転用された土地の面積の多い順に色分けして示したものである。数十㎢単位での住宅地開発が行われた。山手線の内側の面積は65㎢であるのでその規模が分かる。
この住宅の殆どは住宅価格の毎年の値上がりを前提に組まれた超低金利の長期間ローンで低所得者に販売された。住宅価格相場が上がるとローンの組み換えをする事で、手元に現金が残ると言う奇妙な仕掛けであった。
しかし、これはガソリンは安いものとの仮定の上に成り立っていた。原油価格は1998年には1バレル9ドルと安く、ガソリン価格は1ガロン(3.7ℓ 1ドルもしなかった。これは1ℓ20円以下と言う安さである。原油は値上がりを続け2000年には35ドルとなったが、それでもガソリン価格はガロン2ドル程度で我慢ができた。
ところが2006〜2008年にかけての原油は急騰し一時140ドルを超えた。これは中国とインドがその経済発展の為に価格を厭わず原油を買い付けた事に起因しているが、140ドルを超えたのは、機関投資家に依るものである。年金基金等の巨大なファンドを持つ機関投資家が設けをたくらんで原油を買い付けた為に急騰した。
ガソリン価格はガロン3ドルを超え、SUVでの長距離通勤は不可能となり、周辺の住宅地の人気は下がり住宅価格は下落した。それがサブプライムローンの破綻につながり、リーマンブラザースの倒産になった。
エネルギー価格を市場に野放図に委ねるとこのような結果が待っているとの教訓であった。
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