IT無しには持続可能性社会の実現は考えられないが、課題もある。
IT(Information Technology, 情報通信技術)は目覚ましい発展を続けて来た。IT機器の大きさ、重量、使用されている材料、消費電力は初期のIT機器の1000分の1以下になっている。ITは今後も高性能化、小型化、省電力化し続けてゆくであろう。今後はITが他の産業の資源生産性の向上の為の中心的要素になって行く。
EUは2008年に「EUが今後も発展して行くのに最も重要な事は、エネルギーを含めた資源消費量と経済発展を切り離すことである」としており、これにはITが果たす役割に大きな期待がされており、ITは持続可能性社会のコアと言える。
しかし、現状はIT産業そのものにもまだ問題を抱えており、ITを使った技術にも課題は多い。
●一次的課題。IT産業そのものの資源生産性の問題、例えばIT機器の消費電力、待機時の消費電力、サーバーセンターの巨大な電力消費の問題、スパムメール等によるIT資源の無駄遣いの問題などがある。それより最も大きな問題は、IT機器のリサイクル率の低さと言う問題である。現在世界で年間5千万トンの電子系廃棄物が処理されている。2008年には3億台であったPCが2015年には20億台になると予想されており、電子系廃棄物の量は増加の一途である。現在リサイクルされているのは20%程度で、その他は埋め立て処分されているのが現状である。
●二次的課題。ITが産業界で使われる事により、大きな省エネ効果がが実際に出ている。在宅勤務、電子請求と支払い、スマートグリッド、ビルオートメーション、ロジスティックなどで「最適制御」により資源生産性が大幅に向上している。従来有ったものがITに置き換えられたもの、例えばTV会議は出張を無くし、ディジタル写真は銀塩フィルムを無くした。しかし、携帯電話の様に以前には世の中に無かったものが出現して、その為に資源が使われる「誘導効果」も合わせ持つ。
●三次的課題。ITの発達により長期的に起きる社会習慣の変化、経済構造、工業構造の変化がある。これはエネルギー消費に頼らない持続性社会を作る大きなチャンスをもたらすが、ITの発展により、いままで想像もできなかった新しい資源消費が進む産業が興る可能性も含めて注意をし続ける必要がある。
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