空気(断熱材)を暖めたり冷やしたりするのはエネルギーの無駄遣い
読者の皆さんの中には欧州を訪れた方も多いと思う。欧州には中世に作られた古城がたくさんある。これらの城を真冬に見学に訪れた方は気が付いた事と思うが、城内を案内されて回ると、客間、大広間、執務室、寝室がみんなだだっ広い割に結構暖い。中世の城にはエアコンは無い。暖房器具としてあるのは広い部屋の片隅にあるタイルでできた立派な「カッヘルオ―フン」である。これはたいてい部屋の隅にあり、焚口は壁を挟んだ部屋の向こう側に有り、たいてい台所である。焚口で薪を燃やし、その熱で料理を行ったり湯をわかしたりしている。その熱は壁を通って反対側のカッヘルオ―フンを暖める。カッヘルオ―フンは分厚い粘土で作られており、外側はセラミックのタイルで覆われている。このセラミックが遠赤外線を出して部屋中を輻射熱で暖めている。
我々が現在使っている冷暖房はエアコンである。エアコンは文字通り空気を暖めたり冷やしたりして部屋の温度を調整する。部屋は空気で満たされているので空気の温度を調整すれば快適になると言う考えであるが、空気は断熱材である。断熱材は熱を伝達しにくく、貯熱の効果も無い。90度のお湯には入れないが、90度のサウナには入れるのがその理由である。その空気を暖めたり冷やしたりするのは多大なエネルギーが必要である。
カッヘルオ―フンは遠赤外線を輻射する。遠赤外線は光で可視光線の波長が長い赤色の外側に位置するので、遠赤外線と言われている。遠赤外線が皮膚に当ると、皮膚中の水分が運動を起こし発熱するので暖かく感じる。
中世の城で体験された方は覚えて居られると思うが、カッヘルオ―フンは意外と暖かいのである。室内の空気の温度が低くても体感温度は暖かい、快適な暖房である。エネルギーの消費はエアコンの半分以下である。料理に使った排熱の利用と考えれば、もっと効率は上がる。輻射熱冷暖房は今後発展すると思われる。
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