自動車の車重の軽減=燃費の向上=地球温暖化ガス削減に繋がる技術
最近のTVに流れる自動車のコマーシャルで目に付くのは、前方の障害物を検知して自分で止まると言うものだ。国産、外車を問わず宣伝している。これは、車に搭載された、ミリ波レーダーとTVカメラの画像から衝突の危険を即座に判断し、ドライバーに先立って車を停止させる、プリクラッシュ・セーフティー・システムと言う装置である。
2006年に自動車メーカーがこの装置を販売しようとしたところ、国交省から「運転者の装置への過信を戒める為に衝突前の停止は行ってはならない」とのお達しで、警告音、ブレーキの強さを増倍する、安全ベルトの巻き上げ準備等の機能に限られていたが、2008年以降は次第に15km/h以下の走行時に限り停止可となり、現在は15〜40km/h走行時に自動停止を行うシステムになっており、国内外の各社がこぞってこのシステムの搭載を始めた。
欧州のユーロNCAPによると、自動緊急ブレーキの採用により27%の事故の予防が可能としており、2014年からユーロNCAP、5つ星認定の条件となった。保険会社も料率の割引を取り入れ始めた。
乗用車はその車重は0.7〜2.5トンもあり、実際に輸送しているのは平均で1.7人で荷物も含めたペイロードは100kg程度である。車重の多くは衝突時の搭乗員の安全確保の為のもので、衝突が防止できれば重量はずっと軽くできる。燃費は総重量に反比例するので、車重が10%軽くなれば燃費は10%良くなる。
交通・運輸部門は世界の地球温暖化ガスの23%を排出をしており、その44.5%は乗用車で年間34.2EJ(エクサ・ジュール)、約530億トンを出している。この10%が軽減さるだけで、約23億トンのガソリンの消費が減り、53億トンのCO2排出が減少することになる。しかし、現在自動車の安全基準はプリクラッシュ・セーフティーが搭載されても軽減されて良いことにはなっていないので、燃費に影響はない。このシステムが定着して安全性が認められ、安全の為の重装備が軽減されるのはまだ次の段階であるが、持続可能社会の為に期待が持てるシステムである。
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