トランプのカードハウスに住む人類
持続性学 自然と文明の未来バランス(明石書店 林良嗣他編)と言う本の中のHans-Peter Dürr博士(ドイツ・マックスプランク研究所名誉理事長、ミュンヘン大学名誉教授)の講演の中から、かいつまんで紹介する。
私たちは人類の将来をデザインできるのか、ということですが、もっと環境を考えた形で将来を設計しなければいけないと思います。(略)人類は生命体の一部であることを考えなければいけません。(略)自然は私たちがいなくても存続しますが、私たちは自然なくしては存続できません。(略)
毎日エネルギーを送ってくれるのが、太陽です。私たちが使える唯一の資源です。(略)
バイオシステムは、地球上に住んでいる動植物を指すシステムです。私たちは機械に慣れていますので、バイオシステムを複雑な機械だと思いがちですがそれは違います。(略)この不安定なシステムは、恒常性(ホメオスタシス)がバランスを取っています。恒常性を保つには、エネルギーが必要です。(略)太陽エネルギーが不可欠です。(略)
Dürr博士は、私たちが住むバイオシステムをトランプのカードで作ったカードハウスに例えて、そのカードハウスの最上階で人類は地球に君臨していると錯覚しているのだ、としている。そしてこのカードハウスを安定させているのが太陽エネルギ―から得られる生命活動であるとしており、重要な事は、私たちは、大きな生命体のごく一部でしかないと言う哲学を持つことだとしている。
持続可能性と言う言葉は、一定の状態を保持する静的なもののような感じを受けるが、そうではなく動的な生命活動を維持すると言うものであると論じている。
そして、人類以外の全てのバイオシステムは太陽エネルギーだけで動いているのに、人類だけが、産業革命以来の200年間に地下から化石燃料を掘り出して使う別のエネルギーシステムを作ってしまったところに問題が有るとしている。
Dürr博士は化石燃料を使う経済を、他人の財産を使う銀行強盗経済であると語り、この化石燃料に依存した経済システムが地球環境のバランスを壊していると指摘している。
|