生物から搾取するのではなく学ぶのがバイオミミクリ―
「自然と生体に学ぶバイオミミクリ―」ジャニン・ベニュス(Janine Benyus)著、吉野美那子訳、オーム社刊を読んでいる。
バイオミミクリ―とは人間よりずっと長くこの地球に生きて来た生物から学ぼうと言うものである。生物から搾取するのではなく、学ぶのである。
生物から学ぶにも三つの段階がある。一つ目は、新幹線の先頭車両の鼻の形はカワセミのくちばしを真似たと言うような、その形態を真似る段階。二つ目は人間が陶器を作るには千数百度の高温を必要とするが、貝は低温の水中で全く毒性の化学物質も使う事無く貝殻を作る。その自然のプロセスを学ぼうとする段階。最後の段階は、生体をシステムとして、例えば森の営みを人間の物流システムに応用できないかと考える究極である。
ぼくは子供のころよく神戸港に釣りに行った。突堤をのぞきこむとぎっしりと「カラス貝」がへばりついて居たが、これにはだれも見向きもしなかった。大人になって東京のフランス料理店で「ムール貝」と言う名前で料理になって出て来て驚いた記憶がある。
このムール貝は潮目に住んでいる。潮が引くと炎天下で、満ちると水中である。この潮目にいるプランクトンを食べているらしい。潮目の堤防や突堤にへばりつくために彼らは超高性能接着剤を持っている。水中で固定用の紐を何本かこの接着剤でくっつける。人間の最新の高性能接着剤でも接着面は乾燥している事が条件である。ましてや水中でなど機能する接着剤はまだない。
このように自然界の生物は彼らの数十億年の歴史の中で数多くの発明をしてきている。空を飛ぶ、水中を泳ぐ、地中を進む、ぼくたちが欲しい能力を全て彼らはとっくに手に入れている。それも殆どエネルギーを使わない方法で、である。
やっと、人類も地球上の他の生物の仲間入りの方法を模索しはじめた。
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