CO2排出源への課税ではなく、製品のカーボンフットプリントに課税すべきであるとの議論――エール環境360電子版より
今日からカタールのドーハで地球温暖化対策を協議する国連気候変動枠組み条約第18回締約国会議、略してCOP18が始まっている。
前回のダーバンでは米国と中国を含む全ての国を対象とする新枠組みの合意を2015年までに形成することを目指すプラットフォーム(ADP)の設置が決まったが、今回はそのような大きな議題もなく、先進国と途上国の対立の再燃が予想されている。
日本は、2009年に大喝采を受けた25%削減の鳩山宣言と、その後の第二約束期間からの脱退ならびにフクシマ後のCO2排出量大幅増加との整合性の無さに対する各国からの追求を受けるが、次期政権待ちの政府は反論のしようも無い。
ところで、この京都議定書そのものに異論を投げている論文があるので、紹介する。2012年11月8日のエール環境360(Yale Environment 360)電子版に投稿された、オックスフォード大学フェローのDieter Helm氏が書いたものである。
ヘルム氏によると、京都議定書から20年以上も経過したのに拘わらず、CO2排出量の増加は1990年には年間1.5ppmであったものが現在は毎年2.0ppm増加しており、危険レベルとされる400ppmにはほど無く達する現実が何故起きているのかと疑問を投げかけている。各国のこれまでの多大の努力は何故水泡に帰したのか、京都議定書の考え方に間違いは無かったのかと問いかけている。
1990年からのエネルギー生産の中心は石炭になった。1990年には総電力量の25%であった石炭が、現在は30%に増加している。増加分のほとんどは中国である。中国の石炭火力発電所は増加の一途で、中国とインドを合わせると2020年には400〜600ギガワットの石炭火力発電所が建設される。
しかし、中国に責任を押し付けるのは間違いであるとしている。中国の経済発展は輸出産業であり、その輸出製品は殆どエネルギー集約型の製品である。そして、これらの大半はアメリカ、日本、欧州に輸出され世界のGDPの50%を担っている。確かにCO2を排出しているのは地理的に中国ではあっても、その製品を使い、利益を被っているのは中国外の国である。京都議定書はカーボンフットプリントに対する課税を考慮せずに、排出源のみに課税しようとするものであると言う、根本的な指摘であり、なかなか鋭い。
投稿は次のURLで読む事ができる。
http://e360.yale.edu/feature/forget_kyoto_putting_a_tax_on_carbon_consumption/2590/
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