GDPは幸福の尺度では無い。
2012年8月20日のブログで環境を表すものとしてIPATの式と言うのがあることを紹介した。これは、環境負荷(I) = 人口(P) × 一人当たりGDP(A) × 技術的環境改善係数(T)の事である。このうち環境負荷(I)を数値的に表す方法はいくつかある。例えば環境フットプリントや一定のサービスを受け取る為に消費する資源の量を表すMIPS(Material Input Per Service)等がそれである。
難しいのは生活品質である快適性や幸福度を数値化する事である。IPATの式では単純に一人当たりGDPをパラメータAとしているが、GDPが幸福度を示しているとは言えない。
何がいったい人を幸福にするのだろうか、幸せな結婚、やりがいのある仕事、友人、社会の一員としての自覚などで得られる幸せの方が、資源を消費することで得られる幸福よりも大きい。この事は持続可能な生活様式への地ならしとして重要なことであ、ここには節約、辛抱、あきらめなどの暗いイメージを伴う言葉で表されるものではない。
ファクター5で提唱する資源効率の改善は、全体的システム改善で行うもので、桁外れに大きな改善で持続可能な消費をもたらすものである。その結果、鉄鋼生産量は何メガトンも減り、電力会社は何ギガワット時も電力を作る必要が無くなり、それらに携わる人件費も下がりGDPは低くなる。しかし、GDPが下がる事を恐れることは何もない。GDPは単に売上の尺度に過ぎないからである。生活の快適度や幸福度には直接関係がない。
この説明に良くあげられるのは、自動車事故である。事故を起した車を修理する為にかかる部品代や人件費、もしけが人が出れば医療費がかかりそれを払う保険会社の仕事が増える。これらは全てGDPを押し上げる。しかし事故を起こした当事者が幸せであるはずは無い。
また、地球温暖化の為に潮位が一メートル上昇する為に沿岸に有る都市は莫大な費用を掛けて大規模な土木工事を行うが、これもGDPを押し上げている。これが人類に幸福を与えているとは言えない。
|