長年常識となっていたエアコンを考え直す時がきている
世の中には常識と思っている事が、意外に資源効率が悪いものが結構ある。例えばエアコンであるが、空気を冷やして涼感を得るアイデアは第一次大戦中に潜水艦の為に発明されて以来、あたかも唯一の冷房方法のようにエアコンが使われてきた。エアコンは空気を冷やすのであるが、ご存じのように空気は断熱材である。温度を伝えることも、保持することにも向いていない媒体である。その空気を冷やして涼感を得るには多大なエネルギーが必要となる。
一方、オフィスやマンションの構造体は鉄筋とコンクリートである。いずれの材料も良導体で温度を良く伝え、保持する。夏になり、日中の気温が30度を超す日が何日も続くと鉄筋コンクリートは日に日に温度を上げてゆくそのために建築物の構造体の温度は夜になっても高いままである。その為に夜にエアコンを入れることになる。
熱伝導の良い構造物の中に住んで、熱伝導が最も悪い空気を媒体に使って冷房をする。冬にはこれと反対の事を行っている。夏も冬も甚だ効率の悪いことが何の疑問も持たれることなく行われてきた。
空気を冷やすのではなく体の出す熱から放射される遠赤外線を吸収する冷却パネルで冷房する輻射熱冷房はエアコンに較べると使うエネルギーは5分の1以下で楽にファクター5を達成することができるが、その条件は建築物の躯体そのものが外気温から断熱されていなければならない。その為には躯体を外側から断熱する外断熱にすることが必要になる。外断熱の効果は抜群であることは実証済みである。
今回訪れたドイツの友人の家はいずれも外断熱を施しエネルギーコストが半分以下になったと言っていた。外断熱を施して、窓ガラスとサッシを断熱仕様にして熱ブリッジが起きないようにすると居住部の気密が上がる。外気をあらかじめ室温近くにしてから新鮮空気を取り込む強制換気システムが必要となる。しかしこれらを行うことは容易であるし、コストもさほどかからず、改築費用は10年以内に安くなったエネルギーコストで回収が可能である。
|