多くの人を重労働と貧困から救った産業革命
久しぶりに心に残る、良い映画「レ・ミゼラブル」を観た。原作はビクトル・ユゴーが1864年に書いたが、ストーリーは1815年から1833年までを描いている。乾ドックに修理の為の大型船舶が引き込まれているシーンからはじまる。数百トンはあろうかと思われる木造船が何本もの太いロープで引っ張られている。このロープを引っ張る何百人と言う囚人の中に、パン一個を泥棒した罪で20年の重労働の刑に処せられた主人公ジャン・バルジャンがいる。
時代は産業革命の真っただ中で、この時にはジェームス・ワットの蒸気機関は発明されたばかりで、まだ広まってはいなかったのであろう、まだ人力が主な動力源であった。都会には、あこがれて地方から集まって来た人が溢れているが、仕事も品物も少なく貧困にあえぐ人々が描かれている。需要があっても産業に生産力が無かった為に供給ができないと言う経済状態であった。そこで蒸気機関が果たした役割は大きい。大勢の人を貧困と苦痛から救ったにちがいない。正に必要は発明の母であった。産業革命の発明者は人々を重労働や貧困から救ったのである。
しかし、産業革命から200年が経ち、人類は化石燃料を際限なく燃やし続けた結果、地球温暖化を招いてしまったことに気がついた。ここ10年ほど続いている異常気象=気象の狂暴化が大気の温度が地球温暖化ガスにより上昇した事が原因であることはIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告で明らかである。
発明された時は有用なものであっても、それが有害なものに変わる例は枚挙にいとまがない。その最たるものは原子力であるが、最近ではエジソンが発明したフィラメント電球は、そのエネルギー効率の悪さから欧州では製造も販売も禁止となっている。
長年の間に築かれた化石エネルギー依存型の経済から化石エネルギーに依存しない産業に生まれ変わるには、既存権益を持つ産業からの大きな抵抗があるのは当然の事である。それでも欧州では持続可能な経済=グリーン経済への移行が着実にはじまっている。あのアメリカでさえグリーン経済が次世代の経済では無いかとの見方が市場からも出はじめている。14億人の国民を抱える中国はしっかりとグリーン経済への移行を見据えている。
来る2013年を日本の「グリーン経済元年」としてゆく為に、ぼくとしては「ファクター5」日本語版がその幕開けにふさわしい本として、また誰にでも読まれるような本として世に出すことに全力を注ぐのみである。
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