コーヒーやバナナの農園を自然熱帯雨林に戻す事でゼロエミッション
ぼくには幸せな事に世界中に友人が居る。コスタリカにも友人が居て、10年ほど前に一度訪ねた事がある。首都サンホセの近くの町に、おばあちゃん、友人夫婦と子供の3世代が質素ながら仲良く暮らしていた。滞在した3日間の内2日は、ぼく自身が風邪をひいて寝ていたので、結局1日だけ観光をしただけだったが、その分余計に家族から親切にして貰いコスタリカの人の温かさを感じる事ができた。最後の一日友人の運転で見せて貰った所はいずれも自然たっぷりのところばかりであった。友人はバナナ農園で使う農機具の販売をしていたが、その頃だんだんバナナ農園が減少して行く影響でビジネスが成り立たなくなってきたと、嘆いていた事を覚えている。
この国は1949年に憲法を改正して非武装とし、軍事費は教育に充てると決めている。さらに1983年には永世・積極中立宣言を行っている。国土の25%が自然保護保全地区に指定されている。2007年には2030年までにCO2ゼロ宣言を行っている。国土は世界の0.034%しかないところに地球上の生物の5%の種が生きていると言うのが自慢の国である。2009年の地球幸福度ランキングではトップに2012年のギャラップの幸福度の調査で世界で3番目にと、常に上位にランクしている。
コスタリカは過去25年間にGDPを3倍にし、同時に森林面積を2倍にしている。そして現在の予測では2021年には国としてゼロエミッションを達成する世界で初めての国となる。現在、この国は世界銀行からCO2排出権取引の結果として25万ドル(3000万円)を受け取る数少ない国の一つである。
コスタリカは、世界大戦後コーヒーとバナナ農園がアメリカ資本を中心に開発され、どんどん熱帯雨林が減少していた。1996年に環境サービス支払い制度(PES)をスタートした。これは森林を保護する地主に対しその保護サービスに対して対価を支払うと言う制度である。つまり、バナナ農園をジャングルに戻せば森林保護サービス料金を受け取れると言う訳である。ぼくの友人はこの煽りを受けた形だった。この制度は当初は異論もあったようだが、15年後たって全国8000の地主がこの制度に加盟して国土の10%が自然の状態に戻った。地主は1ヘクタールにつき年間78ドル(6700円)を受け取る。新たに保護された地域にはジャガー、オウギワシ、ベッカリー、オオアリクイなどの絶滅危惧種が生息している地域が含まれている。
コンサベーション・インターナショナル(CI)やドイツ開発銀行は将来この熱帯雨林にある種から作られるであろう医薬品や化学薬品を担保に基金を出資しており、現在1700万ドル(15億円)が集まっているが、2012年末には2000万ドル(17億円)になっているはずである。この基金はPESの更なる拡大に使われる。
持続可能国家の一つの有り方を示しており示唆に富み、ぼくらには学ぶ所が多い。
|