究極のサバイバル能力を備えたクマムシから何を学ぶべきか
地球上に住む生物は自分の種を残す為にありとあらゆる戦略を持っている。緩歩動物のクマムシ(Tardigrada)は地球上の全ての場所に生息し1000種以上も発見されている。ふだんは水分が有るところで活動しているが、その場所が乾燥してくると自分の状態を樽のような形に換え非活動状態になり再び水分が得られる状態まで待ちの体制に入る。
その時の鍵は体内の糖分の状態である。糖分をガラス状に換えて細胞を熱や圧力から守り、DNAを放射線から守る。この状態をクリプトビオシスと言うが、この状態になったクマムシは、全く乾燥した場所で、温度は-273℃〜151℃の間、圧力は真空〜75000気圧、放射線は57万レントゲン(ヒトは500レントゲンが致死量)の状態に長時間耐える事ができる。
120年前に採集された苔の間に有ったクリプトビオシス状態のクマムシを水の中に入れると再び活動を始めた例が報告されている。宇宙空間に10日間放置された後に水分を与えられて活動を始めた例も有る。
クマムシは人類が備えていない夢の様な優れたサバイバル能力を備えており、恐らく人類が滅亡した後にも生き残る種の一つである。
自然から学ぶと言う学問「バイオミミクリ―」では、自然界が数十億年の間に習得した究極の省エネの方法を調べて持続可能な社会に生かそうとしている。
人類は空を飛ぶ技術を得たと言っても、鳥にはかなわない、船や潜水艦も魚やくじらには負ける。そして、サバイバル力ではクマムシには勝てない。その上、かれらは最小のエネルギーでそれら全てをやってのけている。
自然界は最も厳しい予算で生の営みを続ける事を全ての生物に要求しており、全ての生物は例外なくその予算管理のもとで生きている。人類だけが例外で、地下資源と言う予算外資源を勝手に使って放漫な営みを行っている。そして、自らの存在の根拠である地球環境そのものを危機に陥れていることに気づくべきである。
|