中国には日本と同じ軌跡をたどってほしくないが
中国北京のスモッグ公害PM2.5が話題になっており、メディアはそれを中国攻撃の材料にしようとしている。公害の歴史はその国の発展の歴史と結びついている。アメリカでは1943年頃から公害が社会問題化され最初の公害規制法は1947年にカリフォルニア州で制定された。1974年には数々の環境関連の法律が整備され、ピッツバーグやロスアンゼルスに青空が戻って来ている。
日本は1945年の敗戦直後から石炭を主要エネルギー源とした産業復興がはじまり、大気汚染公害が社会問題化する。
1962年に日本初「ばい煙の排出の規制等に関する法律」が制定される。1965〜1975までは年率10%と言う高度成長経済に伴い、イタイイタイ病、水俣病などに代表される大気、水質、騒音などの環境問題が社会問題化する。これは1973年の第一次石油ショックまで続く。1967年に公害対策基本法が整備される。
1975〜1984年は安定成長期に入り、公害関連各法が整備され効果が出てくる。1971年には初めてCO2が規制の対象にもなりこの頃の日本は正に環境先進国であった。しかしこの期間の後半から決められた規制値をクリアされなくなる傾向が強くなる。生活に直接影響を及ぼしていた大気や水質汚染が改善され国民の監視が厳しく無くなったせいもあってか、目標値が達成されなくても問題視されなくなる。この頃から日本の失われた20年がはじまり現在に至っている。
この様な一国の環境問題の変化を表す方法として「環境クズネッツ曲線」と言うものがある。(下図)タテ軸には環境負荷の度合いを、ヨコ軸には一人当たり国民総生産を表したものである。未開の段階が左下で、この頃のこの国は貧しいが美しい(日本では1945年以前)。そこから経済発展がはじまり、国が豊かになるにつけ環境負荷は増加する、豊かだが汚い時期(日本では1965〜1974年)になる。次に国は豊かになり環境対策に潤沢な資金が投入され効果が表れてくる段階(日本では1980年頃)であり日本では約35年間かかっている。
現在の中国を環境クズネッツ曲線にあてはめると頂点の手前であろう。ただ、日本と異なるの中国経済の規模が格段に大きく地球環境に与える影響が大きいことである。中国政府は第12次五カ年計画で2012年7月から3年6ヶ月の間に3720億ドル(約34兆円)の財政出動を行って環境対策を行う事を決定しているので、習近平政権の最重要課題であるが、日本がお手伝いできる事が多々あると思う。しかし、北京からスモッグが無くなり美しい冬空が戻って来るのは後数年は掛ると思うが、中国が1975年から近代化がはじまったことを思うとかなり早いペースで頂点を迎えようとしている。日本のメディアは冷静に推移を監視して報道をすべきである。
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