何故大規模農家はフラッキングに反対しないのか?
日本のマスメディアが「エネルギー革命」と称賛を送っているアメリカのシェールガスであるが、現地アメリカではオバマ大統領の環境政策が発表され政府はシェールガスに対する見直しが進められており、シェールガス開発反対意見が強くなってきている。
シェールガスは石炭、石油に比べてCO2の排出が少なくクリーンなエネルギー源と言われている。実際、1kWHの電力を作るのに排出されるCO2の量は石炭は975gに対して天然ガスは600gで約40%も少ない。ところが、ガスは輸送が難しくロシアからヨーロッパへのパイプラインによる天然ガスの輸送途中の漏洩の実績値は5%である。5%の天然ガス(メタンガス)はそのまま大気中に放出されるとCO2の25倍の地球温暖化効果を持っており、その滞留期間も12年でCO2の2.2倍と長い。 これをCO2に換算すると1kWHの電力を作るのに1350gのCO2換算の地球温暖化ガスが排出される事になり石炭よりも環境負荷が大きい。
シェールガスは地中深くの堆積岩層(頁岩層)に含まれている。これを取りだす為に、化学物質を混ぜた水を高圧で側面から注入する事で頁岩に裂け目を生じさせて閉じ込められている天然ガスを取り出すフラッキングと言う方法を用いるが、その為に地下水脈の汚染が心配される。地下水を大量に使う農家はその影響を最も受けるはずであるが、大規模農家からは目立った反対意見は出されていない。
その理由は、シェールガスが採掘されるようになると、これまで輸入に頼っていた土壌の窒素固定剤である硫化アンモニウムがアメリカ国内で生産されるようになり、ガスの価格も安い為に、これまでトン当り800ドルで購入していたものが、82ドルで購入できるようになる事から大規模農家にとっては大変好ましい事である。硫安は河川、湖沼、海洋に流れ出して水を富栄養化させ貧酸素水塊を形成し青潮の原因となる為に自然保護団体は使用を制限しようとしている。
このように、シェールガスは地球温暖化をさらに進めるだけでなく、水質汚染も伴う環境負荷が大きな化石燃料であると言う認識が必要である。
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