ダンテの森    
17 Feb 2013 04:48:19 pm
ドイツの自然チーズ農場
地元の酪農家組合が自力で作った自然酪農とゼロエミッション工場

 昨年暮れにドイツで買って来たチーズが今日で終った。とても美味しいので、少しずつ大事に食べていたが、今日がその最後の一切れであった。このチーズが作られたのはドイツ・バイエルン州テーゲルンゼー(Tegernsee)地方の自然チーズ農場(Tegernsee Naturkaeserei) である。

 過去数十年にわたりバイエルン州の酪農家は搾乳した牛乳を全てそのままタンクローリーで出荷していた。チーズへの加工は加工コストが安いと言う理由で牛乳をイタリアのチーズ会社に送り委託していた。しかし、できあがって来るチーズの品質には常に不満があった。また、年間を通じて乳牛には配合飼料を与えて冬の間は放牧もせずに搾乳を続ける、いわば牛乳の大量生産では昔のような風味の牛乳ができていないと言う問題も有った。

 テーゲルンゼー地方は高級別荘地として知られ高級チーズの需要が有るのに、地元のホテルやレストランでは地元産(じつはイタリヤ製)のチーズが敬遠されるようになった。

 この状況を打破しようと2007年から地元の酪農家達は勉強会を開き、昔この地方で作られていたようなおいしいチーズを自分達の手で作ろうと言う事になった。

 そして、まず乳牛の飼育方法から変えていった。牛には地元で生育した牧草のみを与え、配合飼料は与えないことを決めた。牧草は昔から地元で生育していた種類に限定した。地元産の牧草は風味が有り牛が喜んで食べる。また、ミミズが増え土壌が豊かになり、害虫にも強い事が分かった。牛フンも最長3週間で完全に分解する事も分かった。

 冬場に備え刈り取った牧草は急速乾燥させることで風味を保ちながらひと冬保存できることも分かり、冬場の乳牛の食欲も落ちない事が分かった。それまで牧草はサイロで保管していたが、品質が落ちることがわかりサイロの使用をやめた。冬にも乳牛を雪の牧場で運動させる事、冬場の搾乳を止める断乳を行う事で、乳牛の健康状態が良くなり、春に出産する子牛の数が増えた。このように「自然酪農」を行うようになり、土壌改良剤、除草剤、農薬の散布が著しく減少した。

 つぎに、2010年にはチーズ工場を組合員の出資で作った。建築は木造石積みの伝統的な建築とし、外壁断熱と窓枠を断熱性の高いものにして低エネルギー建築にした。屋根には太陽光パネルを敷き詰め夏の日照時間が長い時にはゼロエミッション操業が可能となっている。工場用熱源の温水、冷水、発電を一つのユニットでおこなうコジェネ・ユニットを設備した。これらの省エネ対策で従来のチーズ工場に較べ60%の省エネが達成された。

 このチーズ工場で作られたチーズは種類により最長18ヶ月熟成された後に地元ブランドで工場の直営店や地元のレストラン、ホテルで出され好評である。現在21の酪農家が組合員で外部資本は一切入っていない。ドイツの大手スーパーが資本参加を申し入れて来たが断っている。また、公的機関からの財政援助も受けていない。

YouTubeで見れる:
http://www.youtube.com/watch?v=nKDzmGxIwr4&feature=player_embedded#!

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