絶賛の声しか発さない日本のマスメディア
昨日から、日本のマスメディアはこぞって愛知県沖で資源開発庁がメタンハイドレートの試掘に成功したとのニュースをまるで天皇家に子供が生まれた時のような手放しのよろこびで伝えている。
ジャーナリストたるもの問題の両面を伝える義務が有ろうと言うものであるが、日本のマスメディアには、もうとっくの昔にそのようなものを忘れ去っているのか、これで日本のエネルギー問題は解決だと夢のようだと褒めちぎっている。
メタンハイドレートは古世代に大量のプランクトンが死滅し発生したメタンガスが次におとずれた氷河期に氷の中に封じ込め海底深く沈んで形成されたもので、燃える氷などと呼ばれている。これは世界中ほとんどどこにでもあり、最大の塊はメキシコ湾にあると言われている。しかし、これまで見向きもされなかったのは、単にその採掘にかかるコストが原油1バレルに換算して130ドルも掛り、中東の原油価格に対抗できなかったからである。2008年に原油価格が140ドルに届かんばかりに急騰した頃から、にわかに世界はメタンハイドレートに着目しはじめた。原油価格は現在も90ドル半ばで高止まりしており、いずれ130ドルに迫るだろうから、メタンハイドレートは商品価値が出てくると考えられている。
メタンは燃やされると同じ熱量を得るのに約半分のCO2しか排出しないので、石油や石炭よりも環境負荷が少ない化石燃料である。しかし問題は生でメタンが大気中に放出されると、軽いメタンは高速で大気圏まで登りそこに留まる。そしてメタンの温室効果はCO2の25倍である。
これまでの天然ガスの採掘、貯蔵、運送をエネルギー産業は長年行ってきたが、現在これらの工程で漏洩の為に大気に放出されている天然ガスは6%であるとしている。恐らくこの6%は最大限の努力の結果であろうと推測する。そうすると、メタンハイドレートをガス化してからもやはり6%は漏れる。これはCO2に置き換えると1.5倍の量になる。燃やした時に出るCO2が0.5でも漏れる分を加えると2倍の環境負荷となる。
そのほか、海底で採掘を行うとその回りにメタンの気泡が発生し気泡が周りの堆積物を持ちあげて行く。そうして順々にその直径が広がって海底の地形を変えてしまうほどの量の堆積物を海中に巻き上げ、軽くなった海底が地滑りを起こし、地震の原因となりうるとの研究がノルウェーで行われている。[Wood et al 2002]
それに、奇妙なのは何故3月と言うこの時期にこの発表が打ち上げられたのかと言うタイミングである。資源エネルギー庁がこの開発予算を増やして貰いたいと言うデモンストレーションであることは見え見えである。マスメディアはそのお先棒を担いでいるだけである。
上に書いたような、負の面も報道して国民に知らせるのがマスメディアのジャーナリストとしての使命であると、ぼくは思う。
「ダンテの森」としては新しい化石燃料を探す費用を省エネとグリーン経済への移行に注ぎ込むべきであると考える。
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