あぶない日本の行き当たりばったり、エネルギー政策転換
日本は、いつか来た道に戻ろうとしているような気がしてならない。世界がやっと近年の気候変動から地球温暖化を認め、持続可能性社会の建設の為にグリーン経済への移行を進めようとしているのに、311被害からの復興と原発停止による電力供給不安を錦の御旗に、あろうことかエネルギー政策を今度は石炭火力に戻そうとしている。自らの原発一辺倒のエネルギー政策の誤りから出た身から出たさびは棚上げにしたままの、長期的ビジョンを持たない、その場しのぎのエネルギー政策の転換である。満州事変に対し、国際連盟が日本のエネルギー供給路を封鎖したので、太平洋戦争に突入した頃の日本の考え方に似かよったものを感じる。「復興」の二文字の前に声を上げる事ができない、民主党始め各政党の態度も、賛意をおくるマスメディアの姿勢も戦前の大政翼賛を連想させられ、背筋の寒い思いがする。
電力供給の約1/4を担っていた原発が停止に追い込まれたため、現在は化石燃料の中では最も環境負荷の少ないLNG(液化天然ガス)火力発電で補っているが、米国経済の好調の為に円安となり燃料の輸入価格が上がり、電力事業者の収支が悪化し各電力会社の電力料金の値上がりが続いている。円安は産業にとって良い事ずくめであったはずである。実際円安を製造業の大企業は謳歌しているようで、大幅な利益増でほくほくである。円安で痛手を被ったエネルギー産業は値上げをして庶民の財布を狙わずに、円安で設けた大企業に負担をさせるように誘導するのが本来の政府の打つべき手である。電力料金の値上がりに悲鳴をあげる国民世論が、石炭火力への転換の追い風にしている。
石炭火力はLNGの倍のCO2を出す。最新鋭の石炭火力は旧式の石炭火力より20%は効率が良くなっているが、それでもCO2は多い。旧石炭が100、新石炭が80、LNGは50の割になる。価格は1kWh当り、LNGは10円、石炭は4円である。安ければ環境に負荷を掛けても良いと言う考え方である。安倍政権の説明によると、増加するCO2分は京都議定書の排出権取引で後発新興国から排出権を買い取ることで相殺するとしている。現在のCO2価格は低迷しており、石炭にすることで浮くLNGとの価格差の約1/4で購入できるからである。
しかし日本は、2013年から始まった京都議定書第三約束期間から脱退している為、排出権取引権を日本から剥奪するべきとの世界世論が高まっており、排出権の購入そのものができない可能性が有ることを安倍政権は無視している。
政府は、実は世界の電力の4割は石炭火力なのだと宣伝しているが、そのせいで地球温暖化が起きていることに気づいた世界各国は、何とか脱石炭火力を目指している。それが再生可能エネルギーへの転換、グリーン経済への転換の動きである。石炭火力が世界から消える日も近い。それなのに今、石炭火力発電所を作ってもその寿命は短く無駄な投資である。それでもエレクトロニクス分野で敗退を続けている東芝、日立、三菱電機などにとって火力発電所は起死回生の最後のチャンスであり、政府は彼らを助けたいのである。
国民はもっと賢くなって政治を監視しないと、日本は又あらぬ方向に進んでしまう。
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