故マーガレット・サッチャーの環境リーダーシップ
GreenBiz.com 2013-04-10 Michael Mothersの記事より、
20世紀の偉大な政治家の一人、故マーガレット・サッチャーが逝去した。追悼の報道は数々あったが、彼女が環境問題にリーダーシップを取っていた事はあまり知られていない。それを取り上げた記事があったので、概要を紹介する。
彼女を好きか嫌いかには関わらず、彼女が環境問題を世界に対し、「直ちに環境負荷を緩和する対策を世界が協力して行う必要がある」と警告をした初めての世界的な政治家であった事は事実である。
1990年、湾岸戦争の真っただ中、彼女は第2回世界環境会議で世界の環境問題に取り組むリーダー達にスピーチを行っている。「国際社会が暴君に対して力で制圧する戦争を例にとり、気候変動の脅威に対し、国際社会が協力して対策をしなければならない。」と訴えている。このスピーチは大変示唆に富んで居り、彼女が感情的だが論理的で、先見性とバランスが有り、ストーリーが有り、しかし断定的なものであった。
彼女は「狡猾な目に見えない気候変動の脅威」と言う言葉で、「地球温暖化の危険はまだ差し迫ったものではない、しかし、私たちの未来の世代にそのつけを回さない為に今から変革を起こし、犠牲をなる覚悟も厭わない態度を取るには十分な兆候がある。」と言っている。
1990年にIPCCが出した初めての報告書を読んで、彼女のこの深い理解は政治的なものではなく、彼女の科学者としての直感から来たものであると思える。彼女はオックスフォードで化学の学位を取った後、長年研究者としての経験がある。
今から四半世紀前、彼女はすでに人類の進歩がバランスを欠いたものであったと看破していた。「産業革命以来、2世紀にわたり、私たちは、科学の発展、経済の拡大、人口の増加がどれだけ進もうと、その進みが滞る事は無いと信じていた。しかし、今それは正しく無いと言うことが解った。」
さらに、「自然に対する義務」があること、持続可能な開発のみが永遠に続く進歩である。」とし、「2005年までにCO2の排出量を1990年のレベルにできるように挑戦しなければならない。」と具体的に数字を上げて述べている。そして、「科学者が生み出した脅威は、科学者が取り除く事ができる。」とし、「エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの開発、代替燃料の開発、森林の回復を力強く推進しよう。」と述べている。また、火災保険に例えて「今、対策のを講じる事は、将来状況が悪くなってから行うより安価である。」とも言っている。
彼女が自由市場経済の信奉者で推進者であった事が、更に環境負荷の大きな社会を作ってしまった事は皮肉である。しかし、1992年の京都議定書が纏まった影には彼女の強大なリーダーシップが影響をしていた事は歴史的事実であったと考えられる。
深い科学的理解力に根ざした環境問題の認識を持ち、政界、財界、学界への影響力と、経済と環境のバランスの上に立ったリーダーシップを発揮できるような指導者が今こそ必要である。故サッチャー夫人のご冥福をお祈りします。
原文(英文)URL:
http://www.greenbiz.com/blog/2013/04/10/margaret-thatcher-climate-leadership
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