スクラップ鉄と連続プロセスで熱効率を稼ぐ米メーカー
日本の製鉄業界は、徹底的に省エネが図られ世界でも最もエネルギー効率が良いと思われているが、1トンに粗鋼を生産するのに必要な熱量は、世界平均は28ギガジュール(GJ)、国平均としてはドイツが18GJ、日本は22GJ、米国23GJ、中国とインドは37GJである。鉄鋼メーカーとして最も効率が良いのはアメリカのニューコア(Nucor)で、12GJである。
ニューコアは現在米国最大の鉄鋼メーカーであると同時に最大の鉄クズの使用者である。2008年には生産量の80%を鉄クズを原料に鉄鋼製品を生産している。2003年にエネルギー消費を17%低減することに成功している。
インディアナ州クロウフォーズビル(Crawfordsville, Indiana)の製鉄所では、2007年12月に世界初の連続鋳造圧延を始めた。第一回目の生産では38時間の間休みなく、製鉄―鋳造―圧延の工程が途切れなく行われ、24杯の取鍋に相当する2467トンの鉄が2387トンの薄板鋼板として生産された。
この技術はオーストラリアのBHPと日本のIHIの共同開発になる技術である。これにより、高炉からインゴットにしてから、薄板鋼板を製造するのに較べてファクター5のエネルギー生産性を達成した。これまで高炉メーカーの独占であった、建築用の型鋼も電炉メーカーでも生産が可能になった。
ニューコアの成功は、伝統的な鉄鋼メーカーや中小の平炉・電炉メーカーに大きな刺激を与え、設備更新が会社存続の大きな条件であることを気付かせることになった。また、鉄スクラップ市場がエネルギー低減に貢献することが再認識されることになった。ニューコアは直接還元による鉄鉱石からの銑鉄と、鉄スクラップの混合率のフレキシブル化を実現して、市場の動向に応じて生産する工場を建設している。
同社は25,000人のチームパートナー(同社では社員をこう呼んでいる)が、世界で最も競争力の強い製鉄会社との誇りを持って働いている。2008年のリーマンショックに発する経済危機の際にも一名の解雇者を出さなかった優良企業ある。
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