米国最大の宅配業者UPSが採用した油圧ハイブリッドトラック
日本の宅配業者のトラックではときどきハイブリッドと大きく車体に書かれたトラックを見かけるようになった。これらはディーゼル―電気ハイブリッドHEVで、その燃費向上は10%程度でしかない。アメリカ最大の宅配業者UPS(ユナイテッド・パーセル・サービスは、世界200カ国に40万人の従業員を有し、一日1400万個の荷物を運ぶ、2005年の売り上げは430億ドル=4兆3千億円の国際物流企業)は、昨年から市内配送用に同社がメーカーと共同開発したディーゼル―油圧(HHV)ハイブリッドトラックを現場投入している。
HHVはNavistar VT365型のV8,200HPのエンジンに油圧ポンプが、ギヤボックス無しで直結されている為に、ギヤによる損失はゼロである。コンピュータ制御の調整弁により出力する油圧は調整されている。ポンプから出た油圧は油圧タンクに貯められる。油圧タンクはEVの場合の電池の役目を持っており、後輪に接続された駆動油圧モータのエネルギー源である。油圧タンクが満杯になるとディーゼルエンジンは停止し、必要になると起動する。一日の運転で、約90分間のエンジンの停止時間が確認されている。
後輪には油圧ポンプが接続されており、減速時に発生するエネルギーで油圧を発生して油圧タンクに送る。街中を走行するデリバリーバンでは、スタートストップの繰り返しが多く、ブレーキング・エネルギーによる損失が大きくこれを回収する事は大変に重要である。この油圧回生制動システムはブレーキング・エネルギーの70〜80%を回収する事ができる。
後輪に直結された油圧モーターで駆動される為にこれまでのトラックに必ず有ったプロペラシャフトは存在しない。また、トランスミッション、クラッチなども無く回転エネルギーの伝達損失が無い。
UPSはこのシステムを2006年から、イートン(Eaton)社と共同で開発を始め、2012年10月に20台をボルチモアに、20台をアトランタに合計40台を導入している。一台あたり7000ドル(70万円)の初期投資で、10年間の稼働で節約される燃料費は2万5千ドル(250万円)であると言う。このシステムの導入により、50%のCO2排出量が削減される。
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