安倍首相のビジョンは戦前の国家主義と同一のものである。―FT
この見出しは5月8日のフィナンシャル・タイムス(Financial Times)電子版に掲載されたコラムニストと言う記事にデイビッド・ピリング(David Pilling)と言うライターが書いた記事である。それをかいつまんで訳すとだいたい次のようになる。
日本が長期間陥っていた不況から、なぜ急激に回復しているのか。これまで日本の指導者達はデフレに打つ手は無いと消極的であったものが、なぜ突然考えを変えたのか。政策の転換に市場は迅速に反応した。円は1ドル77円であったものが一挙に100円と下落し、輸出産業は大喜びである。TOPIXは半年間に65%上昇し、近年最大の伸びで、投資家は我が家の春と楽しんでいる。
市場の興奮は、次第に実質経済にも波及していった。トヨタは利益を3倍にし3月期決算では1兆円の利益を計上し、さらに40%の増益を発表している。日銀は経済成長率を2.9%と発表し、それほど悪く無いと評している。
この急激な変化を可能にしたのは、中国と津波である。津波は、原発を破壊し全国の原発を停止に追い込み、それに伴う電力事情の悪化と電力料金の値上げは、産業に真剣に海外への移転を考えさせた。
二つ目のファクターは中国である。2010年に中国経済は日本を追い抜いた。そこに尖閣問題が発生し、中国各地で反日デモが50の都市で発生し、日本人の反中感情を募らせた。
この二つは安倍にとって絶好の追い風となり選挙に圧勝した。安倍は何より中国に感謝すべきである。
安全保障とエネルギーの脅威は戦前の状況に極似しており、「富国強兵」の再来となった。安倍は2月にワシントンで行った「ジャパン・イズ・バック」と題するスピーチで、「日本は強くならなければならない。まず経済で、次に国防で」と述べている。「富国強兵」である。
このリスクを孕んだアベノミクスと言う名の経済的実験は「愛国主義」で裏打ちされている。4月28日の「主権回復の日」の1952年の日本への政権返還の祝典で、「天皇陛下万歳」とやり、天皇自身が思わす身を引くシーンが有ったが、それをおおっぴらに批判する声は聞こえてこない。
以上が、記事の要旨であるが、ぼくはこの記事を読むまで4月28日に天皇陛下を引っ張り出して、その前で「天皇陛下万歳」とやった事は、恥ずかしながら知らなかった。日本のマスコミはできるだけ見ない事にしているので、そのせいも有るが、さすがの大政翼賛の日本のマスコミも、大々的には報道しなかったのだろう。
原文(英語) URL:
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/717274d0-b687-11e2-93ba-00144feabdc0.html#axzz2US0KOn9X
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