南極の棚氷、減少理由は分離よりも融解でこれまで考えられていたより深刻
ナショナルジオグラフィック ニュース2013-06-14 Jane J. Leeの記事より、
従来、棚氷(陸上の氷河が海に押し出された部分)の減少の主な原因は、先端部が分離して氷山となるためと考えられていた。だが最新の研究で、棚氷の減少には別のメカニズムも働いていると明らかになった。南極大陸の棚氷の大部分は、下から溶けていっているのだという。
このように棚氷が氷と海の接するところで溶けていることは、氷河研究の分野では以前から知られていた。しかしこれまでの研究はグリーンランドおよびアラスカの特定の棚氷を観察したものしかないと、アラスカ大学フェアバンクス校の氷河研究者で、2013年度のナショナル ジオグラフィック協会エマージング探検家プログラムの助成を受けているエリン・ペティット(Erin Pettit)氏は言う。ペティット氏は今回の研究には関与していない。
今回の研究は個々の事例報告から一歩踏み込んで、南極大陸の棚氷の減少の約55%が、氷と海の接点での融解によるものであることを確認した。
「このことから、海の役割は(これまで考えられていたより)重要だと言える」と、研究を率いたエリック・リグノ(Eric Rignot)氏は言う。リグノ氏はカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の教授で、NASAのジェット推進研究所(JPL)にも籍を置く。「海が原因で棚氷が溶けているのなら、地上の氷床にも海が影響を及ぼす可能性がある」。
というのも、棚氷はワインボトルの栓のような役割を果たしているからだとリグノ氏は説明する。つまり、氷河から海へ向かう氷の流れが、棚氷のおかげで、ある程度せき止められているのだ。過去の観測から、棚氷がなくなれば氷河が海へ流れ込むペースは上がり、それにより海水面上昇につながるということが分かっている。
今回の研究結果は、南極大陸が地球温暖化によってどう変化するかを予測する手がかりとなる可能性がある。これまでにも既に、地球温暖化の影響で南極大陸の一部は融解している。
「海水温が今後も上昇するなら、棚氷は少しずつ薄くなっていくだろう」と今回の論文の著者らは書いている。その結果、氷河が海に流入するのを棚氷がせき止める効果も、弱まっていく可能性がある。
原文URL:
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20130614001
|