北極で起きている変化は甚大な経済損失を起こす
ネイチャー(Nature) 2013-07-24より、
北極海の氷が減り、ホッキョクグマの絶滅や、北極沿岸地域の急激な人口増加が話題になることはあっても、北極の気候変化がもたらす地球規模での甚大な経済損失については語られていない。
経済学者達のもっぱらの話題は、北極海が氷に閉ざされた海では無くなった事による経済効果についてである。世界の天然ガス埋蔵量の30%と、石油の13%がここに有り、氷が無くなった為に開かれる北極海航路は経済を活性化するとのことである。ロイズによると、北極海沿岸への投資は今後10年間で1000億ドル(10兆円)を下らないと見ている。
北極海沿岸開発におけるリスクはロイズやフランスの石油大手トタルが予測しているが、それは石油掘削リグからの原油流出に関するものだけで、北極の気候変化が地球全体の気候に与えるリスクは無視している。
北極の温暖化による、気候変動の大きさは計り知れない。何故ならこの地域の気候は全地球的な気流や海流に大きな影響を与えるからである。現在世界で起きている気候の狂暴化に大きな影響を与えている。
その上、東シベリア海の海底に蓄えられている50ギガトンと言う膨大な量のメタンハイドレートが、東シベリア海の温度上昇によりメタンガスとなって大気へ放出が始まっている。50ギガトンのメタンハイドレートが大気に放出されるのを、CO2に置き換えて価格を付けると60兆ドル(6000兆円)となる。これは2012年度の世界経済が70兆ドルであったことを考えればその大きさが分かる。
この50ギガトンのメタンハイドレートはこれから50年以内に徐々にか、突然にか大気中に放出される。メタンガスの温暖化効果はCO2の25倍で、その寿命は12年と長い。
そして、気候変動の影響は地球規模で、巨大な熱帯性低気圧、豪雨、洪水、干ばつなどのかたちで現れ、最も被害を受けるのは発展途上の国々である。
原文(英文)URL:
http://www.nature.com/nature/journal/v499/n7459/full/499401a.html
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