持続可能性経済は人間の持つ本質を協調に有るとする
ファクター５(第11章)から、
トーマス・ホッブスは、17世紀の哲学者である。彼は、人間の本質は闘争状態にある（万人に対する万人の原始的闘争）とし、彼の発した言葉「人間は人間に取って狼である」(homo homini lupus)は、有名になった。現代の市場経済はこの考えの上に組み立てられていると言っても過言ではない。
それに対して、人類学者のメアリー・クラークは協調する人間像の代表である。社会的連帯が無ければ社会そのものが生き延びる事ができないとしている。とりわけ小さく無力な子供は、母との絆、家族のまとまり、協調が無ければ死んでしまう事実を挙げている。彼女は、人類が生き延びるためには原始の時代から、常に協調することに頼らざるを得なかったと主張している。それは集団や種族間で競争が有った事を否定するものではないが、成功をもたらしたものには常に高度に明確な協調があったとしている。メアリー・クラークは、彼女の人類学を次の３つの人間の基本的欲求を観察する事により検証して組み立てている。
■新生児が生まれ、母への繋がりを求めそれを獲得すると言う結びつきへの欲求：家族や、例え部外者であっても、無力な赤ん坊が母親を求める姿を見る事により、独特の肯定的な感情が湧き、魅了され、原始人が置かれていた過酷な条件下で生存を続ける勇気を与える源泉となった。この結びつきへの欲求は生涯に渡って保ち続けられる。その為、追悼の辞において、故人が他の人達にとっていかに多くの意義を持っていたかが強調されるのである。
■自主への欲求：これは、難易度の高い仕事を習得することや、責任を引き受けることを容易にし、可能にさせるものである。自主とは、あれこれ命令される事を好まないと言う事であり、間違いを起こす事が許され、そこから学ぼうとすることである。そして、やっかいな問題を片づけ、責任を引き受けて、それを達成した事を示す事で勝利を味わうのである。自主への欲求は競争を正当化する柱と言えるが、それは他の基本的欲求とのバランスがとれてなければならない。
■全てのことがらに意味を求める欲求：文化とはある意味で、ものごとに意味を見出すことである。文化は、ふるまい、義務、縁故、階層、制度などを、�猜顕修離織撻好肇蝓次蹐悗△襪い廊犲匆馭勝蹐愧畚�づけることである。（訳注：社会脳仮説、霊長類における脳の進化は、集団生活にともなう社会関係の認知の必要性によって促されたという考え。）これは集団が生き延びる為には絶対に必要である。文化とは協調の最高形態であり、万人に対する万人の原始的闘争の反対極に位置するものである。
持続可能社会の基本は協調であり、競争ではない。
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競争より協調の世界を
