省エネに成功すると、市場が拡大し結果として資源消費が増加する
ファクター5第八章環境リバウンドから、
技術者や科学者が省エネ技術を開発して、それが大きな効果を表すとエネルギーの消費量が減ると思うのが普通であるが、実際の市場ではそうは行かない。ある分野の省エネ対策が成功して、エネルギー消費が少なくなると分かると、その商品は大幅に売れ行きを伸ばし、市場規模が大きくなり、省エネで節約した分よりも結果としてエネルギーを余計に消費する事になる。
その良い例は1969年に出てきたジャンボジェットである。それまで、一部の人のものであった海外旅行が、ボーイング747の出現により、一人当たりの燃費や経費が1/4になった。すると、旅客の数はあっという間に20倍になり、結果としてジェット燃料の消費は5倍になった。これを環境リバウンドと呼ぶ。
物知り顔の経済学者達がリバウンド効果について解説する時は決まって皮肉のこもった結論は我々にはこのように聞こえる「これらのありとあらゆる全ての努力はいずれにしても無駄となる。人間が持っている、もっと快適な生活がしたいと言う本性を我々は変える事はできない。そうであれば、流れに任せて生活と成長を楽しめば良いと言うことになる。まあ、その続く限りはね。」この種のレトリックはかなりの影響力を持って広がる。しかし、この論点からは効率向上の効果は分野毎にかなり異なった結果をもたらす事が抜け落ちている。表では米国の住宅建設におけるリバウンド効果を調べる為に、全68の項目にわたる経験的調査結果がそれを証明している。
当時の米国のレーガン政権とサウジアラビア政府は、米国内のエネルギー消費を削減しようとする動きを封じる手段として政治的に原油価格を低く誘導して、米国内のエネルギー価格を低く抑えた形跡が有る。その他にサム・シュール(Sam Schurr)のような、資源効率の向上そのものが低価格を誘導すると言う主張もある。これは資源効率向上技術が効果を出すまでには10年程度の期間が掛ると言うことから、必然的に原油価格が高価である時期(1973〜1982)を経た後になって広まってくると言うことで説明できる。その他、表から分かるように、資源効率の向上は全ての分野で行われている訳では無いし、環境負荷の軽減として現れてくるにはしばらくかかる。 |