日本の2020年度温暖化ガス排出目標05年度比3.8%減は、「90年比で3%増」のプラス目標、国際的な“冷笑”はまぬかれない
Finance Green Watch 2013年10月29日から、
一部報道によると、政府は2020年度までの温暖化ガス排出量を05年度比で3.8%削減を新目標とする方向で調整に入ったと いう。京都議定書の基準年の90年比ではプラス約3%となり、京都議定書時の日本の目標より、9%も排出増を認めることになる。11月にポーランドで開く第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)で、石原伸晃環境相が表明するとしているが、先進国だけでなく、途上国からも「冷笑」を受ける可能性が高い。
報道によると、浮上している新目標値は、原子力発電所の再稼働や将来の再生可能エネルギーの開発を前提とせず、現状の省エネの取り組みを維持して実現可能な削減目標、としている。29日午後に環境相、茂木敏充経済産業相、岸田文雄外相、菅義偉官房長官の関係閣僚が会談し、詰めの協議をする予定という。
日本は民主党政権時代の09年に当時の鳩山由紀夫首相国連気候変動首脳会合(気候変動サミット)において、90年度比で25%削減を言明した。その後、東日本大震災に伴う福島第1原発事故を受け、二酸化炭素(CO2)を排出のない原発の稼働が停止し、火力発電に依存していることなどから、12年までCO2の排出量は3年連続で増加基調となっている。
このため、安倍首相は今年1月、25%削減目標をゼロベースで見直す指示を出していた。05年比3.8%マイナスというのは、90年比では3%前後の増加となり、EUの2020年目標の90年比20%削減に比べて大きく後退したものとなる。また米国も09年のコペンハーゲン合意で05年比17%マイナス(90年比±ゼロ)を公約しており、ほぼ達成が見込まれている。
さらに途上国も、中国が05年比40〜45%削減(原単位目標)、インド、同20〜25%削減(同)などを掲げており、90年比で実質プラス目標を抱える先進国は日本以外にはいない。日本政府部内では、原発の稼働状況が見通せないことから、新目標を立てるか、それとも見送るかの意見対立が続いていた。政府内の対立を、官邸が調整する形で、今回の低水準の新目標案が有力となったようだが、国内事情だけを考慮した日本の対応には、他の先進国のみならず、途上国からも、批判が出そうだ。
安倍首相は第1次安倍内閣の07年時には、「50年までに世界の排出量を半減する」との長期目標を示して国際的な議論を主導した。2020年実質プラス3%で、どうやって30年後の世界半減、先進国は80%削減を達成するのか、具体的な手法を説明する必要がある。これも「福島原発は完全にコントロールしている」発言と同様の、“根拠なき饒舌”の一つになるのだろうか。日本の国民は「諦め」ても、世界の視線はそう甘くはない。冷笑の後には、「日本はずし」が進行する可能性がある。
原文URL: http://financegreenwatch.org/jp/?p=37605
ブログ管理人の知り合いにワルシャワに政府代表の一員として、参加する予定であった環境学者がいるが彼は、日本政府の低水準の目標に嫌気がさして参加を見合わすと言っているが、この記事を読むと彼の気持ちが良く理解できる。 |